4.共為存
俺、龍川芥は、1日のほとんどを同じ場所で過ごす。
それはソファの上だ。
俺とガブリエラが住んでいる屋敷は昔の西洋貴族が住んでそうな感じの雰囲気だ。当然家具もそれっぽいのばかりなのだが、中でもこのソファはとても良い。
骨組みは飴色の木製で、滑らかな曲線とどっしりとした木の重みは高級感を感じさせる。
肌触りの良い革はワインのような赤色で、柔らかい感触はずっと座っていてもストレスなどとは無縁だ。
そしてでかい。何よりでかい。
つまり何が言いたいかというと、寝転がれると言うことだ。
自堕落を極めた俺は座ることすら億劫になることがある。そんな時このソファなら、ベッドまで行かずとも横になれる。
傍には机があり漫画やお菓子を置いておけるし、テレビもゲームもあるから退屈はしない。
そう、ここは俺の聖域なのだ。
引きこもりヒモニートの不夜城だ。
⋯⋯いやまあ、ほんとガブには頭が上がりませんよ。
この環境を揃えるために俺がした努力なぞほとんど無いからな。
いやでも待って欲しい。俺は彼女に血を差し出している。
これは等価交換にはならないだろうか。
ガブは俺を養い、俺はガブを養う⋯⋯はい、私が用意できるのは衣食住の食だけでございます。俺たちの衣も住もガブリエラ負担でございます。
⋯⋯死にてえ。
あーやる気失くした。
もう動けんわー。
今日は社会復帰がてらコンビニにでも行こうと思ったんだけどなー(嘘)。
俺は悪くない。
俺のやる気を奪ってくる世界が悪い。
だから今日も、俺はソファの上で過ごす。
そうだな⋯⋯。今日は映画でも見ようかな。
「アクタ、さっきから変な顔してどうしたの?」
「どうもしないよ。それよりガブ、映画見ていいか?」
「うん。私も一緒に見る」
「そうするか。⋯⋯じゃ、リモコン取りたいから1回退いてくれ」
ちなみにガブリエラは俺が馬鹿みたいなことを考えている間にもずっと居た。
寝転がった俺の腹の上にベターっとくっついて。
そう、俺の定位置がソファの上であるように、ガブの定位置はここなのだ。何故か。
ちなみに普通に座ってる時は隣に居て、寝転がった時は猫みたいに腹に乗ってくる。
何故俺にくっつくのかは前聞いた。
彼女曰く「あたたかいから」らしい。
吸血鬼は基本体温が人間より少し低いから、人肌の温もりがちょうどいいのかもしれん。
⋯⋯しかし退いてくれないな。
「ガブ?」
「⋯⋯んー」
確認のため問いかけてみるも、言葉にならない鳴き声だけ発して腹に居座り続けるぐーたら吸血鬼。
なんなら鳴きながら頬を胸に擦り付けたりしてる。
これはアレだ。
「動きたくないから、退いて欲しいならお前が動かせ」の意思表示だ。
「はいお姫様、ちょっと失礼しますよ」
「うー」
起き上がり、よいしょとガブリエラの脇の下辺りを掴んで持ち上げる。
しかし軽いな。体格的には順当なんだろうが、吸血鬼ってこんな軽いもんなのか?
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