ハーメルン
『裏山で保護した野良犬がニホンオオカミだった。』
笹壁の話は長い。

衝撃の事実が全世界を駆け巡った。かのオランダにて、絶滅したはずの幻の鳥、ドードーが発見されたのである。オランダ政府及び欧州連合は、ドードーに対する迅速な保護及び生態調査を行うと同時に、(つがい)であることを利用して、慎重な繁殖活動を行っていくことを発表した。プロジェクトチームのリーダーはオランダの生物学者、カローラ・デ・ビュール。彼女の功績もさることながら、その美貌も注目の的になりつつあった。

日本で発見されたニホンオオカミ、ニホンカワウソに続いて三件目の絶滅種の発見は、大いなる盛り上がりを見せており、SNS上ではリアルジュラシックパークの到来だと話題になった。

ドードーの発見は日本にも大きな影響を及ぼし、この流れならもしかしたら、エゾオオカミや野生のトキも探せば見つかるのではないかと、調査に乗り出す人もチラホラ見受けられた。

そんなドードーの話題に尽きない日本において、それを覆しかねないニュースが発表の翌々日に駆け巡った。
今まで発見されたニホンオオカミ、ニホンカワウソ、そしてドードー。これらの生物は全て、同一人物によって発見された。という、にわかには信じられないニュースが全国に流れた。

名を笹壁 亮吾。28歳の男性で、数日前までオランダにいたことも明らかになっている。真相の解明が急がれる中、内閣官房長官定例会見において、一人の記者が満を持して質問した。

「昨今、絶滅種と思われていた生物が見つかったというニュースが流れていますが。政府として、絶滅危惧種及び絶滅種の保護の指針、そして絶滅種発見の功労者と噂されている笹壁 亮吾氏の真相をお聞かせ願えますか。」

「まず、絶滅危惧種及び絶滅種の保護の指針に関する質問ですが。その答えは、早急な保護を政府としても推し進めていると共に近く開かれる有識者会議において、必要事項等を練り上げていく予定であります。そして笹壁 亮吾氏に関しましては、えぇ...





紛れもない事実であります。」


笹壁 亮吾とは一体何者なのか、全国のマスコミが調査したものの、確信に迫る情報は掴めなかった。彼の大学の同期や勤めていた会社先の人間にも連絡をとってみたものの、出てくるのは過去のエピソードばかり。彼が今どこで何をしているのか、知る人間は極わずかで、当のひとりはオランダにいるため情報を得るのは困難であった。

元々、笹壁の住んでいる村は半ば外から隔離された超田舎、ご近所付き合いも限られ、彼の住居を知っている人間もかなり少ない。マスコミはかなり苦戦していた。

そんな最中(さなか)、ついに有識者会議が開かれることになった。首相官邸で開かれるこの会議は報道陣立ち会いのもと行われる公開会議で、普段に比べ多くの有識者の出席、そして会議の議題も相まって日本国民にかなり注目されていた。

フラッシュが焚かれる中、首相の挨拶によって会議の開会が宣言される。まず初めに議題に挙がったのが、レッドリストの見直し及び記録されている絶滅危惧種の動植物に対する保護法案であった。
既に『絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律』は施行されているものの、より詳細かつ厳重な保護を行うために新たな項目及び改正案を加えるべきだという認識が強く、様々な意見が飛び交った。

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