ハーメルン
黎明の軌跡 Break the Nightmare
第4話 《ARCUS》対《Xipha》
9月30日。いつも通りの一日だった。
4spgが出ていないか、午後からは全員で各地区の掲示板を回る段取りになっていた。
《モンマルト》でランチを済ませ、俺は先に事務所で他の奴らを待とうとした。ヴァンは洗車にご執心だったし、フェリは近所のガキ共と遊んでいたし、アニエスは雑貨の買い物に出かけていたからだ。
二階に上がり、飾り気のないスチール扉を開けて――そこで視界はホワイトアウト。
気づいたら俺はバカでかい城の前にいて、その門前でヴァンたちが武闘がどうの舞踏がどうのと揉めていた。
とまあ、そんな感じだ。
意味のわからん世界だが、やることが明快なのは良い。
「へぇ、案外踊れるじゃねえか?」
軽やかなステップを踏みながら、モダンドレスのスカートをひるがえすアーロンはアニエスに囁く。
「いえ、男性パートとか全然慣れてないんですけど……」
金髪をオールバックに固めたタキシード姿のアニエスは嘆息をついた。うろ覚えという割には、それなりの身のこなしではあった。
バルフレイム宮のダンスフロアで、二人はワルツに合わせて流麗に舞う。
一方、同じ舞台で踊るのはオリヴァルト、シェラザードの夫婦ペアである。大差はつけられていないはずだが、相手のレベルも高い。
オリヴァルトの宮廷仕込みのダンスは言わずもがな、相方のシェラザードの動きの緩急にも目を見張るものがある。あれはお上品なだけの舞い踊りじゃない。リズム感にどこか東方のニュアンスを感じるのも、個人的には加点ポイントだ。
だが何より、二人のあの息の合い方。夫婦だからというより、長年培ったコンビとしての呼吸に思えた。
「だとしても負けてらんねえよなァ、小娘!」
「は、はい!?」
そもそもが舞踊は俺の本職。片手間で嗜むお遊戯ダンス程度に後れを取ったとあっちゃあ、東方歌劇の花形としての名が廃るんだよ。
連続するターンの最中、アーロンは貴賓席を一瞥する。アルフィンが楽しそうに観覧していた。
彼女が審査員であり、この城エリアを作り出した“夢の主格者”であるならば、その目はこちらに釘付けになってもらわなければならない。
「まだまだギア上げてくぞ。ついて来やがれ!」
「え? え~!?」
《★――第4話 《ARCUS》対《Xipha》――★》
「始め!」
ローエングリン城、バトルフロア。石造りのリングフィールドの中央。デュバリィの号令で、双方が同時に動いた。
ラウラとフィーを繋ぐ光軸――戦術リンクラインが明度を増すと同時、フィーがバックステップで飛びのき、ラウラが前衛に出てくる。
ヴァンは即座にスタンキャリバーを構えた。
意外だ。明らかにフィー・クラウゼルがスピードタイプで、ラウラ・S・アルゼイドがパワータイプ。フィーがかき回して、ラウラが大技で狙う陣形――要するに二人とも前衛にくると踏んでいたのに。
「俺がアルゼイドを押さえる。フェリはクラウゼルの援護射撃に気をつけながら、アルゼイドの側面に回って挟撃しろ!」
「
了解
(
ウーラ
)
!」
自らを盾にしつつ、フェリの行動範囲を広げてやる。
ラウラの正面切り下ろしを、ヴァンは真っ向から受け止めた。
「ぐっ!? うお……っ!」
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