11 大切な人達!
「…ミス・プリンス、ミスター・プリンス。就寝時間後に寮から出る事は禁じられている」
「…ごめんなさーい」
他人行儀なセブルスの言葉に、ソフィアは面白くなさそうに口を尖らせしぶしぶ頷いた。
ホグワーツに入学するにあたっての約束はわかっている。だが実際他人として話す父に何とも言えない寂しさを感じていた。
2人がセブルスと会うのは実に1か月ぶりだった。毎年新年度が始まる前の夏季休暇は、セブルスも家に戻り一緒に過ごしていたのだが、今年は忙しくセブルスが家に戻ってこれたのは初めの数週間だけだった。
「…罰則を与えねばならん、…明日の放課後、私の研究室に来なさい」
どんな内容の罰則なのかと2人は続きの言葉を待ったが、セブルスはそれ以上何も言わない。ソフィアとルイスは顔を見合わせ、不思議そうにセブルスを見上げる。
「罰則の…内容は?」
ルイスが恐る恐る聞けば、セブルスはほんの少し、彼らにしかわからない程度の微笑を浮かべる。
「それだけだが、…不満かね?」
「…?……あっ!なんて事だろう!」
「…まぁ!なんて罰則なの!?」
2人は含みを見せるセブルスの言葉の真意にようやく気付くと嬉しそうな悲鳴をあげた。
罰則という名の、自室への誘いに2人は思わず飛び付きそうになったがぐっと耐え、飛び切りの笑顔を見せた。
セブルスも我が子らに会いたく無いわけではなかった。だが会うにはそれなりの口実が必要だ。
研究室に罰則として生徒を呼び寄せる事は今までに何度かあり、周りから不信感を抱かせる事は無い、密会をする口実としては最適だろう。研究室の奥にはセブルスの自室もあり、そこでなら親子として会話をしても誰に聞かれる心配もない。わざわざセブルスの自室や研究室に近づく命知らずの生徒など、このホグワーツには居ないだろう。
しかし、セブルスは後にこの事を後悔する事になるのだが、今はまだ何も気付いていない。
「もう遅い、寮まで送ろう」
「はい!スネイプ先生!」
二人は嬉しそうに笑いセブルスの両隣に立つと、そっと彼のローブを握った。いつもする彼らの癖だったが、普通の生徒なら決してしないその行動に、セブルスは無言で咎めるような目で見下ろした。
しかし、2人は手を離す事はなく、悪戯っぽく笑いながらセブルスを上目遣いに見上げた。
「僕、暗いのが本当は怖くて…こうして居てもいいですか?」
「私もなの!怖くて震えちゃうわ!」
セブルスは2人が闇を怖がる事はないと知っている。こうしてローブを掴むための、彼らなりの言い訳だとすぐに分かり小さくため息をついた。
「…それなら、仕方があるまい」
だが、セブルスは少し微笑むと振り払う事はせず2人の歩調に合わせゆっくりと歩く。
静かなホグワーツの廊下を歩く親子を、月明かりが優しく照らしていた。
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