16 待ちに待った魔法薬学その2!
「ソフィア…本当に、ごめんね…!」
「ネビル、本当に大丈夫だから…もう謝らないで?」
ソフィアの優しい言葉に、ネビルの目からはまたじわりと涙が溢れ、口からはひっくと小さな声が漏れた。
「さあさあ、もう大丈夫ですから、ミスター・プリンスとネビルは戻りなさい、彼女には休息が必要です」
「…はい…ソフィア、また、様子を見にくるよ…」
ポンフリーに出ていくよう優しく言われた二人は何度かベッドの上でうつ伏せになり寝ているソフィアを心配そうに振り返りながらその場を後にした。
ポンフリーはベッドのカーテンを閉めると、寝ているソフィアを見下ろした。
「さて…ミス・プリンス、治療の為に服を脱がせますが…良いですね?」
「はい…」
ポンフリーは杖を一振りし、殆ど焼け焦げているローブやシャツ、ブレザーを脱がせた。上半身が晒され、ひやりとした空気を感じ思わずソフィアが身を震わせると、ポンフリーは優しく白く大きなガーゼを背中に乗せた。
「──っ!」
ガーゼが触れるとびりびりとした痛みが走ったが、それでもソフィアは何も言わずに痛みに耐えた。早く痛み止めが効けばいい、それだけを考えていた。
「気休めかもしれませんが…炎症を抑える薬をガーゼに染み込ませてあります。あとは薬が出来上がるまで、ゆっくりしてくださいね」
「はい…」
ポンフリーは優しくそう言うと、セブルスに薬の調合を頼む為に医務室から出て行った。
1人残されたソフィアは小さくため息をつき、枕に顔を伏せた。
「…マクゴナガル先生の個人授業…受けたかったわ…」
約束の時間までは後3時間あるが、それまでにこの怪我を治す事が出来るのだろうか。ソフィアは二度目の深いため息をこぼした。
ふと、人の気配と優しく撫でられる感覚にソフィアは目を覚ました。いつの間にか寝てしまっていたようだった。
ぼんやりとした視界と思考で、ベッド脇の椅子に座る人を見つめる。ひどく頭が重い、それに、何だか身体が熱い。
「…とー……先生…」
掠れた声でソフィアはつぶやいた。
セブルスはじっとベッドの上で寝ているソフィアのその赤く痛々しい背中を見つめた。
「傷口から細菌が入ったのだろう、発熱している…」
セブルスはそっとソフィアの頭を撫で、額に手を当てた。通常よりも熱く、そしてじっとりと汗ばんでいる。
「…薬は寝ている間に塗った。…痛むか?」
「大丈夫、…今、何時?」
「…二時半だ。…個人授業のことなら、開始を一週間遅らせるとの事だ」
「…楽しみにしてたのに…」
「しっかり休みなさい、夜には良くなっているだろう」
ソフィアは何か言いたげに口を開いたが、ぎゅっと閉じると枕に顔を埋めた。
魔法薬学での父の行いを、ソフィアはどう受け止めて良いのか分からず混乱していた。今はとても優しい、ソフィアのよく知る父だ。だが、あの時は酷く差別的で、冷酷で、優しさの欠片も見出せなかった。
セブルスは静かに立ち上がると何も言わずにその場から出て行った。ソフィアもまた、強く枕を掴み、何も言う事は無かった。
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