35 なんて幸せな誕生日!
12月13日。
朝日が部屋の中を明るく照らしたその瞬間、ソフィアは目を覚まし勢いよく起き上がるとすぐに服を着替えガウンを羽織り、まだ寝ているルームメイトを起こさないように静かに、だがなるべく早く──一秒でも早くその場に向かうために駆け抜けた。
「こんな朝早くに、一体なんなの?」
「ごめんなさいレディ!今日だけ許して!」
ソフィアに叩き起こされたレディは眠たげに目を擦りじとりと非難的な眼差しを向けながら寝起き特有の掠れた声で文句を言う。機嫌を損ねられたら扉を開けてもらえないとソフィアは慌て、彼女に何度も謝りながらなんとか開いた扉を潜り抜けすぐに寮から飛び出した。
長い階段を降り、まだ薄暗くぼんやりとした松明の灯りしかない廊下を走り、二階の奥、突き当たりまで急いだ。
花束を持つ少女の肖像画の前にくると、そこには待ち人が既に来ていて、ソフィアを見つけるとパッと笑顔を輝かせ駆け寄った。
「ソフィア!」
「ルイス!」
「「誕生日おめでとう!」」
2人はしっかり抱き合い、嬉しそうにお互いの頬を擦り合わせる。
「おはようソフィア、僕のかけがえのない宝物!お誕生日おめでとう!」
「おはようルイス、私の唯一の宝物!お誕生日おめでとう!…今年も先に言われちゃったわ!」
「ははっ!これだけは譲れないかな?さあ、寒いし中に入ろう」
2人は顔を見合わせくすくすと笑い合う。ルイスはポケットから小さな花を出し少女に捧げ、手を取って2人で中に入った。
12月13日、今日はソフィアとルイスの12回目の誕生日だった。
2人は秘密の小部屋で久しぶりにゆっくりと話した後、手を繋いだまま朝食を食べに大広間へ向かった。
たまたま大広間へ向かう階段でハリーとロン、ハーマイオニーと遭遇した2人はそのまま流れでグリフィンドール寮の生徒が集まる長机の後方に座った。
サラダを食べながら、いつも以上に上機嫌なソフィアとルイスを見て、ハーマイオニーが不思議そうに首を傾げる。2人が楽しげで明るいのはいつものことだが、それにしても今日は一層幸せそうだ。
「朝から会ってたの?珍しいわね」
「ええ、そうよ!」
「今日は特別な日だからね!」
「特別?今日何かあったっけ?」
ソーセージを齧り、ロンが怪訝そうな顔をした。今日は魔法薬学の難解な宿題の締切日だ、確かに悪い意味で特別な日には違いない。
ハリー達は顔を見合わせたが、特に思い当たる事もなく、「わからない」と、首を傾げソフィアとルイスを見た。
「今日はね──」
「こんな所にいたのか」
ルイスが幸せそうに微笑みながら答えを言おうとした時、後ろからドラコが現れ、少し不機嫌そうな顔でルイスとソフィアを見下ろした。
ドラコの登場に、ハリーとロンは立ち上がり彼を睨みつける。最早犬猿の中となっている彼らは顔を合わせるたびに常に喧嘩腰だった。
今回も何か嫌味の一つでも良いに来たのだろうか、どうせまたクリスマス休暇に家に帰ることの無い自分への嘲笑だろうとハリーはドラコを睨んだ。
だが、ドラコは睨まれても少しも気にせずハリーとロンを見て鼻で笑う。
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