ハーメルン
【完結】スネイプ家の双子
386 成人した誕生日!



7月31日。その日はハリーの誕生日であり、魔法族にとって特別な17歳の──成人を迎える日だ。モリーはハリーのために大々的な誕生日会を企画しようとしていたが、次の日はビルとフラーの結婚式であり、準備に忙しい彼女の手をこれ以上煩わせたくなかったハリーは「いつもと同じで大丈夫です」と遠慮した。
そのため、その日は奇跡の子であり、英雄であるハリー・ポッターの成人の日としては慎ましく祝われる事となっただろう。
とはいえ、シリウスは太陽が出る前から張り切って家の中を飾り付けしていたのだが。


ハリーはその日、目覚める前に夢を見ていた。それがただの夢ではなく、ヴォルデモートの意識と思いが見せている夢だとわかったがハリーは特別気にする事はない。閉心術が上手くいった試しがない彼は、自分の意思でヴォルデモートを追い出せない事を理解していたのだ。
ただ、ヴォルデモートが探しているグレゴロビッチという名前に聞き覚えがあるような気がしたが、目覚めてからいくら考えてもその人物が誰なのか全くわからなかった。誰だかわからないが、不運な人だとは思う。──あのヴォルデモートに探されているのだから。


ロンから『確実に魔女を惹きつける十二の法則』と書かれた本を貰ったハリーは、後で読めばもう少しソフィアに気の利いた言葉をかけられるようになるのだろうかと考えながらロンと共に台所に降りていく。

結婚式のために昨夜訪れたフラーの両親とビルが朝食を取っており、暖炉の前のソファにはシリウスが座っていた。


居間にある広いテーブルの上にはプレゼントの山があり、壁には色とりどりの飾りつけが施されている。結婚式の飾りではなく誕生日を祝うフラッグに、ハリーは目を瞬かせまじまじと自分のための誕生日飾りを見つめた。


「ハリー!誕生日おめでとう」


ハリーに気付いたシリウスは誰よりも早くハリーの元に駆け寄り溌剌とした笑顔で言った。片腕でハリーを引き寄せ軽くハグし、祝う気持ちを目一杯込めて背中を叩いた。ハリーはなんとなく気恥ずかしくてこそばゆくなりながらも嬉しそうに笑う。


「ありがとうシリウス」
「俺からのプレゼントは、これだ」
「わぁ!なんだろう?」


シリウスは用意していたプレゼントの箱をハリーに手渡す。手のひらよりも一回り大きい四角い箱であり、わくわくしながら包みを開けたハリーは一眼見て息を飲んだ。
物の価値に疎いハリーでも、その箱の重厚感と高級感を感じてしまうほどだった。何が入っているのかはわからないが艶やかな黒い漆塗りの木箱であり、ハリーはごくりと生唾を飲みそっと蓋を開いた。


「時計……」


中に収まっていたのは黒革ベルトの時計であり、シンプルな銀時計の文字盤には細長い文字が輝いていた。


「魔法使いが成人すると、時計を贈るのが習わしなんだ」
「ありがとう!……なんだか、高そうな時計で緊張しちゃうな」


箱の中から取り出し、しげしげと眺める。太陽の光を受けたその文字盤は、夜の星空のように美しく輝いていた。
ハリーの感想にシリウスは低く笑うだけでその時計の価値までは伝えなかったが──その時計一つで家が一軒建つ程の値段だ。


ハリーは数年前にソフィアから時計をプレゼントされ、それからずっとその時計を気に入って着けていた。ソフィアが贈った時計は普段使いし易いものであり、フォーマルな場では些か釣り合わないだろう。

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