39 信じたいの!
クィディッチの試合が行われる日、ソフィアとルイスは自分の父が箒に跨る姿を見たかったが、こっそりと観客席から抜けだし花束を持つ少女の部屋へ来ていた。
「どうしたの?ソフィア、話って…」
「あのね、ルイスは勿論…父様を疑ってないわよね?」
おずおずとソフィアがいえば、ルイスは当然だと言うように頷いた。
「当たり前でしょ?」
「そうよね…その、ルイス。ニコラス・フラメルは賢者の石の創造者だったの。多分、ケルベロスは賢者の石を守ってるんだわ。…それで、私昨日初めて知ったんだけど…グリンゴッツに8月2日に侵入者があったらしいの。それで、ハリーはその1日前にハグリッドが侵入された金庫にある物を取って、ホグワーツに移送する仕事があるって言ったのを聞いたみたい。…それが、たぶん…賢者の石なんだけど…」
ソフィアはそこで言葉を区切り、深呼吸をした。
ルイスは怪訝そうな顔でソフィアを見て、まさか、と呟く。
「まさか、父様が盗みに入ったって言いたいの?」
「…いいえ!わたしは父様を信じてるわ!…けど、父様…いつもは夏季休暇中ずっと家にいるのに…今年は8月になると…用事があるって…忙しいからって…私、父様を…し、信じたいけど…ハリー達は、父様だって…私…どうしたらいいのか…」
ソフィアの目には薄ら涙が浮かんでいた。
どれだけ違うと言っても誰も話を聞いてくれず、父が犯人だと決めつけている。それに、その考えを覆すほどの確たる証拠はない。勿論、父が犯人だと言う証拠も無いが。ハリー達が言うように辻褄はあっているのだ。
大切な友人達が父を蔑み罵倒する中、ソフィアは心を摩耗させ、疲れ切っていた。
「ソフィア…」
「ルイス!私、どうしたらいいの?どうしたら、ハリー達はわかってくれるの?絶対父様はやってないのに!」
ソフィアはルイスの胸に飛び込み、わっと涙を流した。ルイスは悲痛な面持ちでソフィアの背中を優しく撫でる。
たしかに、ハリー達の言うように父も怪しく見えるだろう、元々の印象は最悪だし、ケルベロスにも噛まれている。一度こうだと思い込むと、それを拭い去るのは中々に難しい。
ルイスは胸の中で震えるソフィアを強く抱きしめた。
「大丈夫だよ、ソフィア。父様はやってない。父様は金も、不老不死も求めていない。…それは子どもである僕たちがよく知っている事でしょ?」
「で、でも…父様は、母様が亡くなって…酷く落ち込んで…も、もし…死を恐れていたら…?自分のためじゃなくて…私たちを…不老不死にするためだとしたら…?」
ソフィアは、賢者の石が隠されていると知った時からずっとその事を考えていた。
セブルスからのかけがえのない愛情を感じていたからこそ、ソフィアはその可能性を捨てきれなかった。
ルイスははっと息を呑む。一瞬、あり得るかもしれない、と思ってしまったのだ。
「──そんな事ないよ、大丈夫。…僕たちは…父様を信じよう」
「…、…ええ…そう…そうよね…」
ソフィアは、ルイスも同じ考えに至ったのだと気がついた。だが、そのルイスが父を信じると言ったのだ、なら、自分も信じよう。そう、強く目を閉じながら思った。
「ごめんなさい、ルイス…」
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