398 父として!
「だって、あなた達は結婚しているわ!あなたが私たちと一緒に行ってしまうことを、トンクスはどう思うかしら?」
「トンクスは、完全に安全だ。実家に帰ることになるだろう」
リーマスは冷静にハーマイオニーの疑問に答えたが、その答えはハーマイオニーが知りたいことからややずれていた。
トンクスは今まで前線で戦ってきた闇祓いだ。彼女の性格的に、家に隠れて安全に過ごす事をよしとするなど考えられない。どちらかといえば彼女もハリーの旅について行きたがる方だろう。
「なぜ、トンクスは実家に戻るの?だって、トンクスは──」
「それは……」
まさか、結婚生活がうまく行かず出ていったのだろうか。いや、昨夜の結婚式でリーマスとトンクスは周りを警戒しつつも仲良く寄り添っていた。リーマスもまた、トンクスを気遣うように見つめていたとソフィアは知っている。
リーマスは言葉を止め、なんとも言えない沈黙が居間に流れる。まさかトンクスは前線に立てぬほどの何か大怪我でもしたのだろうか、とハリーは顔色を変え「怪我、とか?」と震え声で聞いた。
「いや。──トンクスは妊娠している」
蒼白な顔をするハリーに、リーマスは意を決して不快な事を認めるという雰囲気で口を開いた。
途端にハーマイオニーが「まあ、素敵!」と目を輝かせ、ソフィアは「わぁ!おめでとう!」と手を叩き、ロンは「いいぞ!」と喜びながら自分の足をぱしんと叩き、ハリーも「おめでとう」と祝ったが、四人の反応を見てリーマスは作り笑いのまま視線を逸らした。
「だから、トンクスは安全だ。──それで、君たちの旅に私達は連れて行ってもらえるのかな」
「え?──トンクスは妊娠しているのよね」
「……そうだ」
ソフィアは訝しげに眉を寄せ、リーマスはほとんど冷淡と言っていい声音で吐き捨てる。
ハーマイオニーとロンとハリーは同時にソフィアを見て、そして開きかけた口を閉じた。──ソフィアの横顔に激しい怒り悲しみ、そして失望の色を見たからだ。
「リーマス。そりゃあ、あなたが来てくれたらきっと旅は安全なものになるわ。旅の目的を教えられないとはいえ、きっとたくさんの脅威からあなたは私たちを守ってくれる」
「勿論だとも。我々はほとんど誰もが立ち会ったことがなく、想像も出来ないような魔法と対決することになるに違いない」
「そうね。リーマス。でも私はわからないわ」
「何が──」
怪訝な顔をするリーマスを、ソフィアはじっと見つめる。その真の強さを持つ緑色の目に、リーマスはアリッサではなく──何故かセブルスを思い出した。
「何故、あなたはトンクスのもとに──自分自身の子どもと居ようとしないの」
「優先順位の問題だ!トンクスは、あの家で両親に護られる。完全に安全だ!──ハリー、きっとジェームズなら間違いなく、私と一緒に来て欲しいと思ったに違いない」
リーマスは頭を掻き、ソフィアの視線から逃れるためにハリーを見る。しかしハリーの考えもソフィアと同じであり、たとえ親のことを持ち出されたとしてもその気持ちは──シリウスの時とは違い、微塵も揺れなかった。
「僕の父も、あなたが何故自分自身の子と一緒にいないのかとわけを知りたがったと思う。だって、父さん──ジェームズは最後までリリーと一緒に居て、僕を護ろうとしていた。そうでしょう?」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク