CHAPTER2 (非)日常編3
キーン、コーン… カーン、コーン…
「おはようございまず。7時になりました。今日も一日元気で頑張りましょう。」
いつも通りのチャイム。これに合わせて目が覚める。ふと思うが、やはりこのアナウンスは気持ちが悪い。普段俺たちの前に現れるモノトラは非常に粗野で野蛮な話し方をする。そしてこの毎朝毎夜の時間を知らせるアナウンスは同じ声でありながら、非常に丁寧な話し方をしている。この違和感はとてつもない。そんなしょうも無いことを考えていても別にここから出してもらえるわけではないのだが、どうしても気になってしまう。
まあ、そんなことも考えていても仕方が無いので、いつも通り俺は朝食の準備を手伝いに食堂へと向かうことにした。自室を出て、寄宿舎のホールに出て行くと、食堂の方が何やら騒がしかった。
「うわああっ!!一体何だい、これは!!?」
普段すごく冷静なアンリの珍しくうろたえる声が聞こえてくる。それに続いて、
「オメー、ここでもうストップだぁ!!!!」
九鬼もなんだか大騒ぎをしていた。その他にも畔田や美上、山吹と言った食事の準備に参加しているメンバーの騒ぎ声が聞こえてくるので食堂に入ってみると、どうやらみんなはキッチンの方にいるようだった。意を決してキッチンの方に入っていくと、そこには大きな火柱を上げているコンロとその前に立ちはだかる涼風、そしてその様子を見て大きくうろたえるみんなの姿があった。
「一体何をしてるんだ?」
「ちょっと、水島!!いいから紫ちゃんを止めてよ!!!」
「なぜ俺が。」
「いつも作らせてばかりじゃ悪いからって言うから作らせたらこんなことになってんのよ!!!どう頑張っても私たちじゃどうにもならないから水島どうにかして!!!」
「美上やアンリで無理なもんは俺でも無理だろ。」
「頼むよ、どうかそう言わずにさ!!!」
珍しくアンリが人に頭を下げている。いや、本来経営者として頭を下げることもあるだろうから、本来別に珍しい光景ではないのかもしれないが。はあ、仕方ない。話を聞くか。
「涼風は何をしてるんだ?」
「見て分かんない?朝ご飯作ってんの。」
「それはどこの風習だ?少なくとも俺の育った地域では朝食を作るときに火柱を上げる習慣はなかったぞ?」
「何変なこと言ってんのさ?フランベだよ!」
「フランベでもここまでの火は上がらん。それじゃ焦げるばかりだろ。」
「そんなことないって!絶対おいしく…、おいしく…。」
そう言いながら涼風が手元のフライパンに目を向けると、そこにあったのは本来何であったのかその判別は難しい、哀れ、黒コゲの炭となった何かであった。
「あれ?失敗?」
「今更かよ…。あんなに火柱が上がってたらこうなるのは火を見るより明らかだろ。」
「料理だけにね。」
「茶化さない!」
「おっかしいなぁ?もっとおいしそうになるはずだったんだけど…。」
「何見てやった?」
「昨日図書室で見たフランス料理の本。」
「なぜそんなハイレベルのものをいきなり選んだ?」
「だっておいしそうだったんだもん!!」
「あのな?料理はもっと段階的にレベルを上げていかないとこうなるんだからな?」
「はい…。勉強し直してきます…。」
涼風はシュンとした様子でキッチンを出て行こうとする。
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