浮遊大陸海戦
おかしい。誰もがそう考えた。
1972年に打ち上げられたパイオニア10号を皮切りに、木星は何度も探査されている。しかし、こんな大陸級の大きさを誇る岩塊が大気の中に存在しているという報告は、只の一度たりともなされていない。
となれば可能性として最も高いのは、ガミラス人が何らかの理由で持ち込んだという物だが、現在進行形で危機に陥っているヤマトに考える時間は無かった。
「島、此の浮遊大陸にヤマトを着陸させろ!!」
「了解!!」
敵が関連しているかもしれない事を頭に入れつつ、沖田が島に指示を飛ばした。島は指示通り、絶妙な操艦で周囲に浮かんでいる小規模な岩の群れを避けつつ、ヤマトを浮遊大陸に向かわせる。
「島、もう少しだ!!」
古代の言葉から数瞬後、ヤマトは浮遊大陸の上を流れる巨大な川に着水した。突如として10万tを越える巨艦に着水された事で、川の水は津波となって沿岸の木々を薙ぎ倒す。
「ぐっ!!」
ヤマトの艦体は慣性に依り簡単には止まらず、川の水を弾き飛ばしながら突き進む。島が艦体各所にあるスラスターを吹かして止めようとするが、艦は言う事を聞かない。
「錨を撃ち込めっ!!」
沖田の言葉に従い、島は艦首の主錨を付近の岩山に向けて高速射出した。岩山の表面に突き刺さった錨から、錨鎖とキャプスタンを介して強力な力が艦体に加わる。島はキャプスタンが抜けてしまうのではないかと危惧したが、其れよりも先にヤマトが辛うじて停止した。
「……ふぅ」
「やったな」
無事に停止出来た事で島の肩から力が抜ける。隣に座る古代も同様の様子で、島に掛けた声からは緊張感が消えていた。艦内各所からは損害報告が届けられるが、可能な限り減速した状態で着水した為、機関部を除いて無傷だった。
「機関室、状況を報告せよ」
其の機関部の状態も、第一艦橋側が思っていたよりは良かった。エンジンはオーバーヒートを起こしたものの、安全装置が正常に作動した御蔭で大きな損傷は無く、僅かな修理で対応出来る物だった。冷却器側もヤマト計画の重要性を鑑みて設計時の安全係数が過剰な値に設定されていた為、適切な値に戻して定格出力を再設定すればワープに耐えうるだろうと真田が結論付けた。
「分かった。修理を急いでくれ」
「戦術長、意見具申」
古代が具申したのはヤマトが降り立った此の大陸の偵察だった。ガミラスの物である可能性がある以上、攻撃を受ける可能性が出て来るので沖田が此れを許可する。第二、第三格納庫は水面下なので使用出来ず、第一格納庫にある2機のコスモゼロが偵察機役に抜擢され。カタパルトからヤマトを発つ。
コスモゼロは此の2機しか生産が間に合わなかった為、一般搭乗員用ではなく、指揮官用とされている。赤い0-1101号機は古代が前線指揮を執る際に使用し、オレンジの0-1102号機は航空隊隊長の加藤が使用する。だが今回は古代がヤマトで指揮を執る必要が有った為、代わりに加藤の部下の篠原が0-1101号機に搭乗していた。
「あらぁ……不思議な空だねぇ」
篠原がコクピットから空を眺め、そう言った。彼の言う通り、浮遊大陸の空は不思議と言える物だった。一定の高度までは地球と同等の重力が木星中心に向けて作用している。
だが、其の直ぐ外側はある種の無重力地帯の様で、幾つもの岩塊が浮いている。
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