悪魔の力
「此れが……波動砲……」
崩壊していく極小規模の太陽を見ながら古代が呟いた。頭では理論も威力も理解している心算だったが、実際に見るのは違った。恐るべき、等という言葉では全く生温い、人類が扱って良い物なのかも分からない威力。
「凄い武器だよ!!此れさえ有ればガミラスと対等に……否、其れ以上に戦える!!」
南部の気持ちは理解出来る。此れ迄、地球は10年近くに渡って敗退を繰り返して来た。だが、其れを考えたとしても尚、古代は南部の言葉に同調する事は出来なかった。
「我々の目的は敵を殲滅する事ではない」
沖田が冷たく言い放つ。元々静かだった艦橋内が、更に静かになる。
「……波動砲は我々にとって此の上無い力となる。だが、使用を誤ると、大変な破壊武器となってしまう事が分かった。今後、使用には細心の注意が必要だ」
注意、というのが戦術、戦略的な意味ではない事が古代にはわかった。そして其れは他の者達も同じ様で、南部も浅はかな事を言ったと自覚し、俯いている。此れはその威力で人類を惑わし、増長させる悪魔の力なのかもしれない、と古代は感じた。
一方、ガミラス軍側でもヤマトに依る波動砲の使用は観測され、軽いパニック状態に陥っていた。
「浮遊大陸基地、どうしたんだ!!応答せよ!!浮遊大陸基地!!」
監視衛星から送られていた映像が、一瞬の閃光と共に途切れた。近くに有った他の衛星はどれも同様の状態で、映像を送って来る様子は無い。やっとの事で動く衛星を発見すると、映し出されたのは悲惨な状態になったズピストだった。
「あ……あぁ……」
ガス型惑星によく見られる、自転方向に沿った縞模様が引き裂かれている。
「……何だ……これは……何があった!!」
一目で、基地に居る筈のラーレタの生存が絶望的であると分かる。シュルツはテロンの戦艦を舐めて掛かっていた訳では無いが、此れ程とも思っていなかった。
「直ぐに出せる艦は居るか?居たらズピストへ送って状況を確認させろ!」
「はいっ!!」
万が一の可能性に掛けた救助の任務も負わせ、ズピストへ艦艇を送る。
「テロンの攻略方法を根本から見直す必要があるな……」
ズピストで使用された兵器は何なのか、どの程度の威力なのか、効果範囲はどの程度なのか、量産は可能なのか。ありとあらゆる情報が不確定な状況下で次の戦闘を挑んだ場合、取り返しの付かない事態に発展する可能性がある。
「テロンの戦艦がズピストを離脱します」
「あの武器は一体、何なのだ……」
プラード前線基地内にシュルツの言葉が木霊する。だが、問いに答えを与えてくれる者は誰も居なかった。
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