転属
「凄いテクノロジーだわ……此の人工オルガネラは、ナノ・マシンで構成されています」
「体表組織は何だか分かるか?」
「表面構造ハ軟性テクタイトラバーデ構成サレテイマス」
古代が戦ったガミラス兵が、技術解析室に運び込まれ、調査されていた。どれも銃撃を受けている為、完全な標本にはなり得ないが、得られる情報は大きい。
そして実際に交戦した者からも情報を得る為、技術解析室には古代と森も呼ばれていた。
「真田さん。ガミラス人は機械生命体だった、という可能性は考えられますか?」
古代と真田、そして情報長として真田の下で働いている新見はヤマト計画以前から面識がある。古代の兄である古代守が、マサチューセッツ工科大を首席卒業してから宇宙防衛大学に入った真田と同期だった為だ。新見はマサチュ―セッツ工科大に於ける真田の後輩であり、卒業後は彼を追って宇宙防衛大学にも入学したので、古代守の後輩でもある。
「断言はまだ出来ないが、考え難いだろう。今の所、此の二体から自己増殖する様な構造は発見出来ていない」
「体内に持っていなくても、別の形で持っている可能性があるのでは?」
「勿論、それも考えられる。だが、イスカンダルから齎されたガミラスの情報にそういった物は無かった」
「確かに……そうですね」
可能性として0ではないが、考え難い。根拠を得る迄は断言しない、真田らしい意見だと古代は感じた。
「では、我々は戻ります」
「……ユキカゼに生存者が無かったのは、間違い無いんだね?」
「……はい」
「そうか……ありがとう」
「……失礼します」
仲の良かった人間の言葉にしては、一見冷たく見える。だが、決してそういう訳では無い事を古代は知っている。
「真田副長って、冷たい人なのかしら?」
「否、そうじゃないよ。感情が表に出難いだけで、優しい人だ。あ、そう言えば聞いたかい?エンケラドゥスで僕等を助けてくれたコスモゼロ。航空隊じゃなくて主計科の山本って奴が乗ってたらしいんだ」
指揮下に置いている航空隊から上がって来た報告を聞いて、驚いた事を古代は思い出す。あの時、第二格納庫は高度不足でコスモファルコンを出せず、航空隊は浮遊大陸の時の様に二機のコスモゼロを出そうとした。だが、航空隊の加藤達が第一格納庫に到着した時、既に0-1102号機がカタパルト上で発艦体制に入っており、戦闘後に降りて来たのは主計科の女性だったと言う。
「あんな良い腕なら、引き抜きたいんだよなぁ……ってどうしたんだい?」
顔を隠すような姿勢になっている森。表情は分からないが、金色の髪から顔を覗かせている耳が真っ赤に染まっている。森はエンケラドゥスで古代に助けられた時の事を思い出して顔を赤くしているのだが、古代の頭では想像も出来ていなかった。
「……エンケラドゥスでは、ありがとう」
「えっ?」
「守ってくれたじゃない……私を」
「それは……任務だから、当然だよ」
「……そうね……そうよね」
ぎこちない空気がエレベータの中を支配する。古代は何とか状況を打開しようと話題を探すが、何も見つからない。やがてエレベータは目的の階より手前の階で一度止まり、小さな音を立てて扉が開いた。外から入って来たのは、主計科の女性だ。
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