死角なき罠
ヤマトは短距離ワープの準備を進めていた。目標ポイントは冥王星、ガミラスが遊星爆弾を発射する度に強力な熱源が観測されるポイントの上空だ。此処がガミラス軍の冥王星前線基地、若しくは基地の中でも中枢となる施設の所在地であると推測されている為、ワープ終了後に艦砲射撃を浴びせる予定で居る。
ワープで近付く理由は、敵艦隊に依る迎撃を極力避ける為である。観測の結果、冥王星付近の宙域にガミラス艦隊はまだ展開されていない事が分かった。沖田や古代、真田はガミラス側がヤマトの波動砲を恐れている為ではないかと推測しているが、真偽は分からない。
だが、ヤマトが通常航行でのこのこ近づいて行けば艦隊が出てくる可能性は十分にあり、そうなればヤマトは叩きのめされる事となる。其れを避ける為、瞬時に距離を詰めるのだ。
「ワープ!!」
島の声と共に、ヤマトはワープを行った。そして通常空間へ戻り、艦体周囲の氷が剥がれ落ちて行く。
冥王星は予め行われた計算の通り左舷側に見え、太陽の周りを公転していた。古代は直ぐに左砲戦の号令を掛け、予め旋回させておいた主砲と副砲に目標を捕捉させる。
だが、ガミラス側の方が先に動いた。
「冥王星地表に高エネルギー反応!!」
「何っ」
咄嗟に島が、沖田の命令を待たず艦を動かす。僅かではあるが位置をずらす事に成功したヤマトの後部舷側を巨大な陽電子の束が抉った。推力系に一瞬ではあるが異常が起きた事でヤマトは冥王星に落下し始めるが、高度を戻すよりも一度、敵の射角外に出た方が良いと判断した沖田は島に命じる。
「島、ヤマトを冥王星の海に着水させるんだ!!」
「は、はい!!」
「艦首起こせっ!!」
島は冥王星に薄いながらも存在する大気を利用するべく、安定翼を展開した。そしてアンテナ等の破損し易い物が比較的少ない艦底部を地表に向け、どんどん高度を下げて行く。
「着水体勢に入る!!」
「総員、衝撃に備えっ!!」
ガミラス・フォーミングに依り誕生した冥王星の海がどんどん近づいて来る。島は姿勢制御ノズルで必死に角度を維持し、飛行機が飛行場に着陸するかの様にヤマトを海に突入させた。
艦内に居る全ての人間が大きな衝撃に襲われるが、巨大な質量を持っているヤマトは浮遊大陸の時と同様、中々停止しようとしない。分厚い氷が次々と割られていく。艦首喫水付近の塗装はあっという間に剝がされ、金属特有の光沢を見せ始めた。
減速用のノズルが出せる限界の力を振り絞り、氷のブレーキと共にヤマトを止めたのは着水から数分後の事だった。
「……着水完了」
「気を抜くな」
「はい!!」
冥王星は小さいので、ヤマトが降下、着水を終えた時点で敵の射角から出る事には成功している。だが、其れは敵からの攻撃が終わった事を意味する訳では無いので、沖田達は気を抜く事は出来ない。
「各部、損害を報告せよ」
ヤマトの損害は大きかった。敵の攻撃は掠めただけで波動防壁を貫通し、ヤマトの装甲を溶かしている。溶けた部分からは冥王星の海水が浸水し始めており、ヤマトの船体は其の重みで左舷側に少し傾いた状態だ。
古代は艦隊にせよ、航空機にせよ、地上からの攻撃にせよ、攻撃を受けるなら上方から受ける公算が高い事から波動防壁を上部集中展開させる。
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