遊星爆弾
三週間後、古代と島は再び偵察機に乗り込んでいた。目標は前回と違い、国連軍のコンゴウ型戦艦の5番艦、キリシマだ。機体は順調に飛行を続けているが、キリシマ以外の艦影は全く見えて来ない。
「艦隊は……兄さんの艦はどうしたんだ!?」
古代の言葉を聞いて、島は悲痛な顔になる。艦隊の艦艇の姿が見えない、という事は選択肢は三つしかない。一つは先行して地球へ帰還している、もう一つは遅れている、そして最後は……撃沈された。古代は首を振りまわして艦影を探しながら、同時に機体のバーニアを吹かして姿勢を制御し、内火艇格納庫に機体を誘導した。
「何処にも……何処にも居ないぞ!!」
収容された機体から飛び降り、艦内通路へと走っていく古代。島が後ろから、火星で回収した波動コアを収めた箱を抱えながら追っていく。追いついた時、古代はキリシマに配属されている同期の平田を見つけ、鬼気迫る表情で問い詰めていた。
「平田、教えてくれ!!雪風は……兄さんの艦はどうなったんだ!!」
平田の肩を掴みながら、兄の艦について聞く古代。
「……」
だが、平田は静かに首を二、三度振っただけだった。考えうる選択肢で最悪の物が現実だったと知り、古代の足から力が抜ける。平田と島が慌てて駆け寄り、肩を貸して立ち上がらせたが、古代の表情は暗い儘だった。
「平田、すまないが古代を部屋迄連れて行ってくれないか。俺は、此れを提出してくる」
「あぁ、わかった」
島が離脱し、回収した波動コアを提出しに向かう。古代達に用意された部屋は被弾を免れ、使用する事が出来るし、平田も訪れようと思っていたので場所を知っている。
「平田……雪風の……兄さんの最後は……」
「俺は直接見ていた訳じゃないから、細かい事は分からない。だが戦闘の最後で此の艦を逃がす為に冥王星沖に留まって沈んだらしい」
「そうか……兄さんらしい最後だ。何時も……誰かの為に……」
古代の目に涙が溜まる。両親が既に亡くなっている事を知っている平田には掛ける言葉が見つからない。
「……ここだ」
「ありがとう。もう、大丈夫だ……そっちも仕事が有るだろう。行ってくれ」
「大丈夫って……とてもそうは見えないぞ」
「大丈夫だ……大丈夫」
それだけ言うと、古代は部屋の扉を開いて中に入った。軍艦故に室内は狭く、ベッドや簡易的な机と照明、空調設備ぐらいしか無い。だが、つい先日迄火星の上で使用していた設備達に比べると、かなりマシになったと言える。
「……」
二段ベッドの下段に腰を下ろす古代。頭の中を、兄との思い出が絶えず駆け巡っている。両親が遊星爆弾に依る攻撃で死んだ時もこうだったなと、ふと思い出した。
「駄目だな……俺は」
此の戦争で家族を失った者は大勢居る。自分だけ、くよくよしている訳にはいかないと、顔を両手で二、三度叩いて身を奮い立たせた。
「……大丈夫か?」
何時の間にか部屋に入って来ていた島が、心配そうに声を掛ける。
「島……もう、大丈夫だ。資料提出を押し付けて、ごめん」
「いいさ、それくらい」
艦は回収された波動コアを載せ、地球への帰路を急ぐ。だが、其れを猛烈な勢いで後ろから追い抜いて行く物があった。
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