ハーメルン
宇宙戦艦ヤマト2199改
出会い

 段々と近づいて来る地表を古代は通路に有る舷窓から見ていた。且つては海に隠された海底だった場所が、赤茶けて痛々しくなった姿を外気に晒している。
キリシマは出撃した富士宇宙港ではなく旧九州沖の擬装宇宙港へと降下し、傷んだ船体をドックの中に横たえた。
 古代と島は其処から斜坑エレベータで更に下の層へと降りる。汚染された層は地球を発つ前より更に増えていて、人類が徐々に追い詰められている事を語っていた。

「放射線に依る汚染は地下1km迄来てるな。此の分だと後1年で人類は全滅してしまうぞ」

 ニュースサイトを見ていた島が呟いた。

「ガミラスの人殺しめ。早く訓練を終えて戦いたいよ」

「おいおい、落ち着けよ。俺達の役目は戦う事じゃないだろ?」

「勿論、分かってる!!」

 自分達の役目はガミラスと戦う事では無く、イスカンダルへ向かい、コスモリバース・システムを受領する事。其れは古代も重々承知していたが、心の中に渦巻き始めた復讐心はちょっと時間が経った程度では収まってくれない。其れに突き動かされたのか、古代はエレベータを降りた瞬間に急ぎ足で飛び出し、外で扉が開くのを待っていた女性士官とぶつかった。

「きゃっ!!」

「あっ、すまない」

 後ろに倒れ込みそうになった女性士官を、古代が慌てて抱きかかえる。其の際に顔を近づけた事で、初めて女性士官の顔をはっきりと認識した。
 古代は心臓が止まりそうな位に驚いた。其れは其の女性士官が火星の脱出艇の中に居たイスカンダル人にそっくりだったからだ。 生き写しと言っても良い程に似ている美しい顔に、一瞬、呼吸をする事さえ忘れてしまい、彼女の後ろに居る眼鏡の士官の言葉も聞こえなかった。

「あの……」

「あ、あぁ……大丈夫?立てる?」

「え、えぇ……」

 しっかりと体を支え、女性士官が立ち上がるのを助ける古代。

「……ありがとう」

「いや、俺がぶつかったんだ。悪いのは俺だ」

 女性士官は古代にエスコートされながら、エレベータに乗る。同行していた眼鏡の男性士官がボタンを操作すると、扉は素早く閉まった。

「いやぁ……似てたなぁ」

 古代が思った事と同じ事を、島が口にした。古代は自分の胸中を読まれた様な気がして一瞬、ドキッとした。だが、其れを親友に知られれば揶揄われる事が目に見えているので平静を装う。

「……気の所為だろ」

 そう言い、古代は歩き出す。島は慌てて、其の後を追った。

「おい、何処行くんだよ?」

「別命有る迄待機せよ、って命令が出てただろ?だから命令にあった地区で待機する」

 暫く歩き、近くの駅へ入ると其処から二人はリニアに乗り込んだ。地下都市の空気を清浄さを保つ為に選定されたリニアは、内燃機関の様な煩い音を立てず、静かに走り出す。車内の天井から下がっているモニターは政府広報が発表した発生中の暴動の詳細と、其れに依る交通機関への影響を表示していた。

「また暴動か……」

「嫌になるな」

 人類が一致団結しても乗り越えられる確証とはならないこの局面で、団結すらも危うくする暴動。勿論、起こす者達の気持ちは理解出来なくはないが、何とかならないものなのかと古代は心を痛めた。

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