出会い
待機が指示された場所は地球の防空に当たる空間防衛総隊直下の第7航空団、第810飛行隊が使用する格納庫だった。古代や島の他にも待機が命じられた者が大勢いる様で、明らかにパイロットや整備員とは思えない人間が所在無さ気にうろうろしている。
「……ピリピリしてるな」
「仕方が無い。防空隊の格納庫だからな」
国連軍が壊滅した事で容易に地球圏迄進入して来る様になったガミラス軍。其の迎撃に当たる最前線部隊というだけあって、空気は常に張り詰めている。其処に他所の者が多数混じった事で、空気は御世辞にも良いとは言えない状態だ。
「……ん?」
古代の何かを見つけた様な声に島が振り返る。彼が見ていたのは第810飛行隊が使用している九九式空間戦闘攻撃機「ブラックタイガー」とは全く違う戦闘機だ。
「見た事無い機体だな」
「防空任務用の試作機じゃないか?」
小さく折り畳む為の機構を見る限り、防空任務用ではなく艦載機なのではないかと古代は言おうとしたが、其れより先に答えを言う者が居た。
「零式空間一一型。通称コスモゼロ。此奴は正式採用前の試作艦上戦闘機だ。防空には使わねぇよ」
声を掛けて来たのは苛立たしげな顔をした丸坊主のパイロットだ。亜光速での戦闘を行う為、身体能力を向上させる手術を受けている国連軍軍人で丸坊主は珍しい。体の回復能力も飛躍的に高まっているので、切っても直ぐに伸び、あっと言う間に元の長さに戻ってしまうからだ。
コスモゼロの話は古代も多少は聞いていた。次期主力艦上戦闘機の候補に挙がっている機体の一つで、コスモタイガーⅡ等が居る。試作の状況はコスモタイガーⅡ等に先んじているが、癖が強く、乗る人間を選ぶ暴れ馬だ、という噂があちこちで流れていた。
「見学か?」
「此処で待機を命じられたんだ」
一つ下の階級の人間にしては態度が大きいな、と古代は感じた。だが自分の記憶の中に目の前の人物の情報もあったので、其の態度にも納得はいく。
「そうか。じゃあ、御同類だな」
「加藤二尉!!」
「おおう!!今行く!!そいつに触るんじゃねぇぞ」
整備兵に呼ばれ、戻っていく後姿を古代はじっと見ていた。
「加藤って……」
「トップエースの加藤三郎だよ」
「あぁ……」
「それより……」
島が何か言いた気だったが、古代は其れを無視して振り返った。
「……駄目だと言われると」
「だな……」
二人は後ろのコスモゼロを見る。軍人と言う依り、此れから悪戯をする子供の様な目で。
だが、悪戯は実行されなかった。其れよりも先に空襲警報が鳴り響いたからだ。
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