ハーメルン
宇宙戦艦ヤマト2199改
夕陽に眠る大和

「グッドタイミングだな」

「あぁ……此奴で撃ち落としてやる」

 試験機仕様の為、複座となっているコスモゼロのコクピット内に二人は居た。外では防空隊のパイロットや整備員達が慌ただしく走り回っているが、出撃する様子はまだ無い。大方、出撃命令の下令を待っているのだろうが、これ程にもたついていれば敵機に逃げられてしまうかもしれない。
 コスモゼロは出撃準備を終え、滑走路へ入る。基地位置関係上、滑走路の先は崖になっているが、注意さえしていれば問題は無い。先程声を掛けて来たパイロットが機外で叫んでいるのが見えたが、勝手に動かした事を怒っているのだろうと思い、古代は無視した。

「行くぞ!!」

「いいとも」

 エンジンの推力で力で機体が前進を開始する。速度はどんどんと高まっていくが、管制制御の御蔭でGは掛からない。機体が発進口から出た瞬間に古代はバーニアを吹かし、機体の軌道を変えて崖への衝突を回避した。

「捕まえた!!」

 レーダーが敵機を補足するのに大した時間は掛からなかった。首を上げると、ガミラスの偵察機が高高度を飛行しているのが見えた。

「あれか」

「偵察機らしい!!」

「やれるか?」

「勿論。兄さんの仇だ!!」

 偵察機を落とす為、コスモゼロは高度を上げる。敵もコスモゼロに気付いたらしく回避軌道に入るが、波動エンジンの技術が組み込まれた事で従来の地球機を上回る機動力のコスモゼロが後ろを取る。

「……よしっ」

 古代が射線を確保したと思った瞬間、敵機は左に旋回し逃れようとし始めた。仕方無く、古代は其の後を追い、敵機よりかなり小さい旋回半径で急速な左旋回に入る。外から見た時、エンジンの構造故に左旋回に強いのかもしれないとは思っていたが、結果は予想以上だった。
 敵機は其れでもあきらめずに逃げ回るが、コスモゼロは完璧に追従して見せる。上下が入れ替わると視界が地表で埋まり、坊ノ岬沖海戦で沈没した日本海軍艦艇の残骸が目に入る。直ぐ近くで大昔の先輩達が見ているんだ、情けない姿は見せられないと思い、古代の操縦桿を握る手に掛かった力が大きくなる。

「……貰った!!」

 敵機を完全に補足した事を確認した古代は引き金を引き絞った。だが、機銃弾は発射されず、代わりにエラーが出た事を知らせる警報が鳴った。慌てて画面を確認しようとするが、其れよりも先に島の声が現在の状態を簡潔に知らせる。

「おい、こいつ武装が外してあるぞ!!」

「っ!?」

 ミサイル類が搭載されていない事は分かっていた。だが、機銃弾くらいは装填されているだろうと思い、飛び立つ時に武装関連のエラーは無視していた。其れがとんでもない誤りだったと今なら分かるが、今さら悔いても状況は変わらないし、基地に戻って武装を搭載している様な時間は無い。
 ならば基地防空隊が駆けつけて来る迄、敵機を逃がさず此の場に釘付けにしようと改めて前を見る。敵機はブースターを使って加速し、一気に離脱を試みているがコスモゼロの速度で追い付けない程ではない。

「うっ!!」

 機体が大きく揺れた。別の敵機でも居て、そいつに撃たれたのかと思い状況を確認するが、そうではないらしい。試作段階故の物か分からないが、エンジンが故障し、システムエラーが発生したのだと画面の表示が告げている。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/2

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析