2 新しい風
声をかけられるとは思わなくて、少しびっくりした。
話しかけてきた子の一人は、ツインテールを揺らして輝いた目で見てくる。
もう一人、髪の片側をシニヨンでまとめている女の子は、一歩下がってこちらを窺っていた。
胸元のリボンの色は赤色……ということは、二年生か。
「あれあれ、お二人とも、スクールアイドルに興味があるんですか~?」
先輩に物怖じせず、中須さんは二人の間に割って入るように懐に入った。
「でしたらでしたら、かすみんと一緒にやりませんか?」
「か、かすみん?」
「スクールアイドル同好会のかすみんこと、中須かすみで~す」
中須さんの怒涛の勢いに押され、シニヨンの子がさらに後ずさる。
落ち着かせて引き剥がしたいところだけど……まあいいや。
「元・スクールアイドル同好会ね。僕は天王寺湊」
ツッコミを入れつつ、自己紹介。すると、中須さんが頬を膨らませた。
「むっ。いま新しく立ち上げるって言ったじゃないですか! だから、かすみんたちはもうスクールアイドル同好会なんです!」
「……というわけで、僕たちは、勝手に『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』を名乗ってる二人……ってことになるかな」
よろしく、と手を軽く振る。
「私、高咲侑です」
「上原歩夢です」
相手方二人とも順番に頭を下げる。
ツインテールが高咲さん。シニヨンが上原さん。
律儀で礼儀正しい。良かった。ヤンキーみたいな人が来たらどうしようかと思った。
「本当に廃部になってたんだ……」
呆然としたような口調で、上原さんが言う。
「生徒会長から聞いたのかな?」
「はい。昨日部室に行こうとしたら、そう言われて……」
昨日、と言えば生徒会長が部室からネームプレートを奪った日。
これまた災難な時に……
「あ、あの、ところで、湊さんはスクールアイドルじゃ……ないですよね?」
そりゃそうに決まってる。
「僕は……なんて言うのかな。サポート役というか……」
「サポート……ですか?」
高咲さんが首をかしげる。
「作曲・動画撮影&編集・スケジュール管理・練習メニュー考案……まあ、いろいろやってる人だね」
「へえ、すごい……そういうのって、メンバー内で分業制にしてるところが多いって聞きますけど」
「全部やってるってわけじゃないよ。衣装や小物は他の部の力を借りたりしてるしね」
虹ヶ咲には服飾同好会やハンドメイド同好会とかもあって、 身に着ける物はそこに依頼していたりする。
他同好会は『経験になる』とか『楽しそう』といった理由で、材料費と少しの手間賃で引き受けてくれているから頭が上がらない。
プロに頼むお金もツテもないしね。あっても頼る気なんてないけど。
「じゃあじゃあ、私に色々教えてください!」
ぴんと高らかに手を挙げて、高咲さんが言う。
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