ハーメルン
聖闘士セイヤッ! 水晶哀歌~水晶聖闘士になった俺の華麗なる生存戦略~
水晶哀歌~クリスタルエレジー・水晶聖闘士になった俺の華麗なる生存戦略~

 最初に感じたのは突き刺さるような寒さ。
 次いで襲い掛かるのは激しい頭痛。
 脳梗塞か?
 くも膜下出血か?
 後頭部から、こめかみから、四方八方から、まるで鈍器にでも殴られたかのようにガンガンガンと。
 あまりの痛みに声も上げられずに蹲る。
 歯を食いしばる。目も開けられない。吐き気もする。
 一向に収まらない症状に、いっそ痛みごと無くなってしまえと、冷たい大地に自ら頭を叩きつけた。

 後先のことなど考えず、ただこの苦痛から逃れるために全力で。

 傍から見ればダイナミック土下座だろう。
 普通なら死ぬ。自殺行為だ。死ななくても大怪我だ。

 ならば、これで死ななかった、怪我一つない俺は――普通じゃないのだろう。

「――む?」

 額を打ちつけた氷の大地に俺を中心として亀裂が奔る。
 ヤバい、と思った時には身体が動いていた。

 その場からバク転を行い両足で着地。その勢いを利用して後方へと更に跳躍。
 身体は真っすぐ伸ばし、両手を胸元に組んだ態勢で後方三回転ひねり。
 無駄のない無駄な動きで無駄なスタイリッシュさを発揮して退避完了。

 俺は身に着けていた白いマントを翻すと、風雪を浴びるままに目の前の惨状を観察する。

 頭突き一発で砕けた氷の大地。
 飛沫を上げてシベリアの海へと飲み込んでいくバカでかいクレーター。

 気付けば頭痛は既になく、眩暈や吐き気と言った症状もなくなっていた。
 突き刺さるような寒さも、身体に叩き付けられる風雪も苦ではなく。

 ただただ、日常のあるがままとして受け入れていた。

 当たり前だ。

 なぜなら俺は、私は――

 このシベリアの凍土に生きるアテナの聖闘士(セイント)――

 水晶聖闘士(クリスタルセイント)なのだから。





 水晶哀歌~クリスタルエレジー・水晶聖闘士になった俺の華麗なる生存戦略~





 なのだから、と。
 内心気取ってみたが、非常にマズい。
 何がマズいって、この状況の意味が分からんことがまずマズい。
 マズ・マズイってトミノキャラっぽいな。
 でもオーラロードは開かれてないし、転生トラックを食らった覚えもない。
 神様に会った覚えもないが――やっべ、この世界が本当に聖闘士星矢の世界なら神様いるわ。
 となれば、神様転生じゃなく神様憑依か?
 どの神様が何のために?
 俺ただの一般人のオッサンよ?
 心はいつまでも少年だけど。毎週飛翔してるけど。立ち読みだけど。
 それとも全然関係ない?
 関係ない方が良いな。

 靄がかかっているけど、水晶聖闘士の記憶というか知識は分かる。この身体の使い方も――小宇宙(コスモ)も。
 そして俺にはいわゆる原作知識がある。直撃世代だからね。
 原作知識チートで俺ツエーってか?

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