Training and monster rumors
それから僕たちのトレーニングが始まった。
「最初はとりあえず色々と話を聞こう」
「話?」
「ああ、お前はレースに出ていたんだろう? 適正距離や脚質を事前に聞こうと思っていてな」
「ああ、そうだなぁ。距離は2500mまでは今んところ走れる。走れるだけだけど。脚質は使える時は差しか追い込み、人数が多いと逃げか先行かな」
「……ちょっと待て」
「なに?」
「一番得意なものを言え」
「うーん、どうだろう。これちょっとした悩みなんだけど、出てたレースが500mの超短距離から3000mの長距離で、人数も3人とかから25人なんてあって超短距離とか人数が多いレースはそもそも逃げじゃないと勝てないし、長距離はバ群に呑まれることは少ないから先行から差しくらいのポジション使ったり、状況によって使ってきたから得意っていう意識ないんだよね。あ、ただ、ダートはちょっと苦手」
「……器用貧乏だな」
「失礼な、オールラウンダーだよ。シービーに一勝してるんだからな!」
そう言うと心底びっくりしたような顔をする。
「嘘を吐くな」
「いや、そこは愛バ信じよう?」
「それなら愛らしく振る舞え」
「確かに」
「まあ、いい。そこまで言うなら走りを見てからにしよう」
「承知」
ターフを走る。
やはり一人だけで走るのと、レースとでは勝手が違う。速く走ればいいのが一人、1位を取ればいいのがレース。
この違いは大きい。
カメラを持ち、同時にストップウォッチを持つトレーナー。
僕は走り終わって、息を整えながら話しかける。
「どうだった?」
「そうだな、お前の走りや改善点が見えてきたな。脚質などは今はなんとも言えないが」
「おお! それで、聞かせてよ」
「うむ。お前の走りはウマ娘のものではない。人間のものだ」
げ、と言いかけた。
流石というか、その通りだ。人間はウマ娘の走り方ほど前傾姿勢を取らない。短距離走も胸を張って走るのだ。
なるべくウマ娘の走りを真似して走っていたが、やはりプロにはわかってしまうのだろう。
「ウマ娘の良い所を活かせていない」
「でも、速いよ?」
「ああ、その通りだ。人間の走り方もあれはあれで最適化されているからな。だが、ウマ娘の最適化ではない。……お前は隠しているようだが、まだ人間の走り方だ。今、勝てているのはお前が鍛えているからだ」
「え、他の子も鍛えているでしょ?」
いわばトレセン学園はスポーツ学校なのだ。
鍛えずに来れる子なんていないだろう。
そう言うと、トレーナーは僕のシャツを捲り上げる。
「この時期に腹筋がバキバキに割れているやつはいない」
「確かに」
「……ウマ娘って腹筋割れにくいんだぞ」
「え、そうなの!?」
「そもそもの筋肉の質が違うからそこまで鍛える必要がないんだ。それはG1バでも同じだ」
「そうなんだ……」
鍛えすぎているらしい。
ある意味これは生まれ変わりの恩恵だろう。早くから鍛えられているということだから。
だが、それを自覚すると同時にシービーのやばさが実感する。
鍛え上げた僕とナチュラルなシービーがほぼ同格なのだ。
というか。
「トレーナー」
「なんだ?」
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