■6 究極の存在
◆18 華の拳法娘
「刻詠! 手合わせするアルよー!」
「かまいませんよ」
という会話があって、私と古菲さんの対戦が行なわれることになった。
場所は世界樹前の広場で、ギャラリーはクラスメートの何人かと、古さんの知り合いの武術家達。
立会人として超さんが来てくれて、準備は整った。
「お互いに怪我のないようにネ。では、開始!」
「はっ!」
超さんの開始の合図と共に、古さんが仕掛けてきた。急加速で懐に潜り込もうとしている。
だが、そんなに私は甘くはない。間合いに入った瞬間、回転蹴りを叩き込む。
「ぬっ!」
それを瞬時にスウェーに似た動きでかわす古さん。前進していたのに下がってかわすとか、慣性どこいった。
「朝倉の言う通り、なかなかやるアルね」
「師匠直伝、『旋風脚』です。死角はありませんよ」
「そのよう……ネッ!」
さらに踏みこんでくる古さん。それに対し私は『旋風脚』を合わせるが、来るのが分かっていたのか、古さんは蹴りを片腕で受け止め、さらに前進。素早い突きを叩き込んできた。
それに対し、私はあえて肩口で受け止め、反撃に蹴りをお見舞いした。
「くっ!」
今度は蹴りをまともに受けた古さんが、とっさに距離を取った。
「聞いていた通り、『硬気功』ネ。殴った拳が痛いヨ」
「私の『硬気功』は攻防一体。正面から攻撃を受け止め、反撃を叩き込む技です」
「カウンター主体というわけネ。だが、いつまで練気が続くかナ?」
そう言いながら、古さんが私の周囲をぐるぐると回り出す。
隙をうかがっているのだろう。だが、最初に私が言った通り、『旋風脚』に死角はない。この技は、私の周囲三六〇度の一定範囲に入った相手を迎撃する技なのだ。
「むむむ、これはなかなか……。不入虎穴、焉得虎子。覚悟するネ」
虎穴には入らずんば虎児を得ず、ね。覚悟するのは、私と彼女どちらだろうか。
「ハイヤー!」
古さんの連続攻撃が私を襲う。
それに対し、『硬気功』を身にまとう私は、被弾を恐れず反撃を加えていく。
その反撃をなんとかさばき続ける古さんだが、彼女に入った有効打はそこそこ。
戦いは私の優位に進んでいる。しかし。
「ここネ!」
古さん渾身の崩拳が私の腹に突き刺さる。
そして、私は勢いよく吹き飛ばされた。
「そこまで!」
超さんの制止の声が入り、私は受け身を取った体勢で身体から力を抜いた。
「思いのほか良いのが入ったアル」
「そうですね。『硬気功』が切れた瞬間を狙ったいい攻撃でした」
私は起き上がり、砂埃を払ってから古さんに近づき言った。
「刻詠の『硬気功』、ずいぶんと長く続いたからあせったアル」
「最大で一分ほど続けられますからね」
この世界流に『気』を身にまとうだけならずっと続けていられるが、技としての『硬気功』は六十秒が今の限界だ。
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