スピカに加入して初の本格的なウマ娘トレーニングを開始したチェイス。レースの技術はないとの事だが、元から走り込みを続けていただけあって走りのフォームはかなりの出来、それを行っている最中にリギルの東条トレーナーがシンボリルドルフを伴ってやって来た。
「本当にミホノブルボンにそっくりね……」
「だろ?俺も天倉町で顔合わせた時にマジで吃驚したんだよ」
「それにしても……貴方、好い加減あの勧誘方法やめときなさい」
「今回ばっかりはマジで事故なんだよ……」
東条トレーナーは後悔していた。理事長の所に連れて行った後は寮で荷物の整理もあるから帰らせたと聞いたので、後日勧誘、最低でも走りを見せて貰おうと思っていたら既にスピカに勧誘されていた。実際スカウトしたのは沖野なのでそこはまあ……納得出来るが、問題はスピカ伝統と言っていいのか、ほぼほぼ拉致な勧誘方法で連れて行かれたと聞かされて本気で頭を抱えた。
「あの子、警察志望なんでしょ。マジで通報されるわよ」
「される寸前だったよ。まあ今回の一件でゴルシも止めてくれるって言ったから多分大丈夫、だと思う」
「信用がないわよ、付き合い長いんだから確りと手綱を握りなさい」
「分かってる」
本当に分かっているのか極めて謎。だが一先ずはトレーニング中のチェイスへと目を向ける、が、今行っている坂路トレーニング。ウマ娘のトレーニングの中でも最もキツい部類に入るトレーニングで彼女が似ているミホノブルボンはこれをし続ける事でスタミナを克服したと言われる。そんなキツい坂を―――軽快な走りであっさりと登ってしまった。一緒に走っていたスペシャルウィークを遥か後方に抜き去って。
「あれがルドルフが言ってた山道を抜けた走りか……ピッチ走法も既に身に付いてる、しかも足の回転がかなり速い」
「チェイスは毎朝山道を走っていたからか、坂道は慣れっこだそうです。しかもその山道はかなり路面状態が悪いのにも拘らず」
「息一つ乱してないってどんな山道なんだよ」
「私とエアグルーヴもきついと思う山道、としか言えませんね」
改めてその言葉の意味を実感する。普通坂道であれば負担が大きく加速は難しい筈なのに、チェイスは問題なく加速していく。彼女にとってレースの坂道なんて平坦な道と何も変わらない。この程度で坂道なんて認めないと言いたげな程に凛とした立ち姿でスペシャルウィークが登り切るのを待っている。
「む、無理ぃ……チェ、チェイスちゃん何でそんなに平気そうなの……?」
「地元では山道を走ってました、これ以上に傾斜がありましたので」
「う、うそぉ……」
「沖野トレーナー、坂路はあと何本走ればいいですか?」
「何本!?」
信じられない!と言いたげなスペシャルウィークの声が木霊する、それはまだやれるのかというよりもそれに付き合わなければいけない事への物なのだろう。まるで藁にも縋るような瞳を投げかけてくる、元々これ以上坂路を走らせるつもりはなかったので別のメニューを当てておく。
「いや坂路はいいぞチェイス。チェイス、今度はスペと走ってくれ。レースまでにレースの技術やらを叩きこむ」
「分かりました、スペ先輩歩けます?」
「も、もう少し待ってぇ……」
一先ずスペが回復するのを待ってから並走トレーニングに入る事になった。どんな身体をしているのか、と沖野と一緒にされたくはないが東条も気になって来た。
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