第六話「陽光と山吹」
「ですねェ」
留一と明路はソファに案内され、監督と呼ばれている男と話していた。新作の刑事ドラマがバトル要素を含む作品故、タオやその戦いをモチーフに入れたいとのことである。
「あ、もちろんそのままじゃないですよ?」
「まあ教えられないですからね~。システムは国家機密でーす」
「ですからあくまでモチーフですモチーフ!今もなお起き続けてる事件を扱うってのはこう、世間的にもね」
「我々は何をすればいいのでしょう」
「まああくまで取材ですので、お話を伺えればと。正直新しすぎて何もわからないので、現場を見ていただきつつにはなっちゃうんですが」
「構いませんが、基本的に我々の業務は緊急性を問われるので」
「そりゃもう!いつでもまっすぐ向かってください!」
撮影スタジオはレイフの本拠地にそう遠くない。出動に困ることもないし、この監督も悪い男ではなさそうだ。秋の日差しの中、スタジオの敷地で撮るシーンがこの後だと言う。向かいましょうという誘いに頷き3人席を立った時、監督の携帯が鳴る。
「あ、はい。また君?あのね、前も言ったでしょ?無理なものは無理なの。そこにお金かけられないから。いい?うるさいな。じゃあね!」
「……どしたんですー?」
「ああ、うちの技術を使ってくれって、合成の技術者から電話がかかってくるんです。最近は何度も何度も!ノイローゼですよ」
大変ですね、そうこぼす明路に本当に大変なんですよと監督がため息をついた。
「あそうだ!装着って、していただけますか?」
「浅井さん、どうだ?」
「いいけど充電しなきゃだよ~?」
「了解。射撃や派手に動くようなことはできませんが」
「ああいいんですいいんです!美術担当にしっかり見てほしいっていうのがあるんで」
監督はとにかく取材さえできれば満足との事である。再三に「最新技術であり最新装備なのでしっかり教えるのは難しい」と語る留一だが、それでいいのだと監督はまっすぐな姿勢。
このあとまだいろいろ聞きたいと言いつつ、待っていてくれと2人は部屋に残される。
「……浅井さん、どう思う」
「何がぁ?」
「この番組の事だ。すでに撮り始めているのに今からタオを取り入れるのか?」
「まあテレビ東京だし大丈夫でしょ」
「どういう理屈だ……」
「ってかマ、あくまで要素だけって言ってたし戦いについて聞ければいいんじゃなーい?撮り始めてるったって脚本は全部書いてるわけじゃないだろし~」
「参考とは言うが、スーツは使うのだろうか?」
「マジで言ってる!?使わせないよ!!」
「そのものではない。モチーフにした装甲服などが劇中で出るかという話だ」
「どォ―だろう……分かんないから見せて言ってたしこれから決めるんじゃな~い?」
「「見せて」というか「見てて」だな。あちらの事情も説明したいのだろう」
だねーなどと軽く答える彼はブラックコーヒー片手。明路は一瞥して手の中のカフェラテに口をつけた。
「苦いのダメよねミチくん」
「ああ……何度か試したのだが、どうも慣れない。浅井さんはいつもブラックだな」
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