ハーメルン
仮面ライダーレギエル
第八話「墨染の満月」

「矢沢裕香。二十面相プロダクションの女優です」

明路は検事の置いた資料に手を伸ばした。今回被害に遭った検察官たちは記憶が薄れていたが、やはりシェイドについては隠し切れるわけではない。あえて語っていないだけで、警察内では秘匿事項と言うわけではない。混乱を避けるための情報統制はしているが、あくまで混乱を避ける最低限である。

「今回掴まったシェイド犯罪者は……カメラマンらしいですね」

「カメラを使った3D技術を認めさせたかった、が動機だそうです。厳密にはその際に邪魔だった……我々レイフの排除」

「あなたがたの存在が……警察組織そのものを危険にさらすのでは?」

「……」

「では一度なくしてしまいましょうか!」

割り込んだのは留一だった。当然いぶかしむ検事だが、そもそも留一は技術者としてレイフ内でそれなりに立場がある。彼にしかできないことも多い故この程度の無礼には目をつぶる者が多い。

「なくしたらどうなるでしょうねえ……やっぱり警察が追うでしょうか!それとも災害と定義して自衛隊が?いいですねえ!明確な対処法がなくなるので死人がいっぱい出るでしょうが、私たちのせいではなくなりますので~~!」

「……失礼、出過ぎたことを。今後もシェイドへの対処を」

「ええ、勿論です」

検事もこう出られて噛みつくような人間ではない。むしろ大人げないというか子供っぽいのは留一の方だが、その状況を納得させる雰囲気が彼にはある。当てつけのつもりか、2人が話す部屋で作業を始めた。なかなかイイ性格をしている。割を食うのは明路かもしれない。

「話は戻りますが、矢沢裕香の兄、裕絵ですが。彼も映像関係の技術者とか。……どうやら2年前に始めたと。高価ではあるのですがいささか革新的な合成技術でもあるとかで……失礼、彼を褒めるのは一度置いておいて」

「2年前……。では、雨雲発生装置を作っていた際は、まだ技術者ではなかった、と」

「ふむ……」

「つまりさ!」

口を開いたのは留一だった。

「……女優であり、日光に弱い妹を活躍させるために!とか?」

「テレビ業界を変えようと?犯罪を犯してまで……?」

「愛憎は人を狂わせますから」

検事の放つ言葉はいたって冷静。多くを見て来た者なのだろう。







第八話「墨染の満月」







深夜、撮影スタジオ。果たして太陽はそこに居た。
機材の破壊と、役立ちそうなものの奪取を目的とした行動には月もそばに居た。

「……暗いわ、兄さん」

「照らすかい?」

「お願い」

ほんのり放たれるオレンジ色の暖かみ。シェイドムーンは寂しげな様子で兄の肩に触れた。

「テレビ画面で見る太陽と、同じだわ」

「お前も……きっとその場に入れるようになるさ。テレビの上でだけになるけど」

「いろんな人に見てもらえる?」

「当たり前だろう。こんなにきれいな顔と声、この世界が放っておくはずがない。おかしいのは、この芸能界の方だ」

どれだけ力を得ようとかわいいたった一人の妹にしか見えない。シェイドだろうとなんだろうと、裕絵にとって彼女の認識は変わらない。

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