ハーメルン
東方酔恋華~Girls In Love~
離別

「グワーッ!」

今日も彼が来るのを待っているが、その間にも調子づいた他の人間どもが襲ってくる。うーん、これは本格的に門番の採用を検討するべきかしらね。わざわざ館に入るのを待って迎撃するのも面倒だし、庭とかそこらに罠を仕掛けて……。
あぁ、ダメね。うっかり彼が引っ掛かったりする絵面しか浮かばない。彼ったら、そういう察知能力はてんでダメなんだから。

「くそっ……化け物め……!」

「……っ」

人間が吐く悪態に、思わず顔を顰める。だって、彼はそんなこと、一度だって言わなかったから。私のことを「吸血鬼」と呼びこそはすれど、醜く罵るような様は見せなかった。彼は強い者をリスペクトする傾向が強い。特に、自身の父を打ち倒したという吸血鬼には並々ならぬ執念と敬意を持っている。
まったく……同じ人間なのに、どうして彼とそれ以外とでここまで差が出るのだろうか。生き方ひとつ異なれば、まったく人間というものは千変万化するものね。

「隙ありっ!」

「くっ……」

しまった、少々考えに耽りすぎたか。鏃が銀でできた矢が、私の頬を掠めていった。
頬に感じる焼けるような痛み……彼との戦闘で感じるソレとは違う、命を奪おうとする痛みだ。

「よしっ……全員、聞け!吸血鬼とて生き物だ、必ず殺すことは出来る!」

先ほどの矢が当たったことで気勢を取り戻した人間達が、少しずつこちらににじり寄ってくる。
これ以上、奴らに勢いを与えるべきではない。気を取り直して私が構えを取ろうとすると……。

……おい

入り口付近からかけられた、冷めきった声。全員がそちらに視線を向けると、彼がいた。
よりにもよって、こんな時に……まいったわね。

「お……?お前、人間か!お前もこの吸血鬼を倒しに来たのか!?」

「……そうだ」

「よしっ!……見たところ武器は何もないようだが、仲間が増えるなら心強い!!俺達で協力し合えば、吸血鬼など恐れるに足らずばぁっ!?」

彼に話しかけた人間が、一撃で倒れ伏した。彼が、人間を思い切り殴り倒したのだ。
これには、他の人間どももそうだが、私もひどく驚いた。

「なっ!?何をするんだ、君!俺達は仲間だ!」

「仲間……?違うな、それは違う。俺は吸血鬼に勝利したいだけで、吸血鬼を殺したいわけじゃない。俺の好敵手を勝手に殺そうとするお前らが、俺の仲間であるはずがない。
そこの吸血鬼を倒すのは俺だ。断じてお前らなんかじゃねえ、この俺だ。その邪魔をしようってんなら……お前らから叩き潰してやる」

そう言って、彼が構えを取りつつ殺気をばらまく。そんな彼を恐れたのか、「勝手にしろ」だの「後悔するなよ」だの「頭おかしいぞコイツ」だのと好き勝手言いながら、彼が殴り倒した男を介抱しつつ逃げていった。
そんな人間どもを見送った後、彼は殺気を霧散させると私に向き直った。いつも見る、あの清々しい笑顔で。

「さて……待たせたな、吸血鬼。
お前、連戦になるけど大丈夫か?怪我の治療とか休憩とかいるか?」

「……フッ、必要ないわ。あの連中、貴方よりもよっぽど脆いから、いかに殺さないようにするか苦心する程度で、大したことはないわ。
貴方なら遠慮なく攻撃できるし、何より死なないでしょう?それに、休憩ならあなたがあいつらと絡んでいる間に十分とっておいたし、心配はいらないわ」

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