一周年記念 誕生日パーティー
「イヴ姉! これどこに隠しとくの!」
「B-68区画に運んでください! 空間転移ではなく物理で!」
「はいよ!」
ハイツレギスタの本社ビルことドロッセルお嬢様のお家。普段はまぁ比較的静かと言いますか、たまに食べ物を巡って世界の危機レベルの熱量が動き回ったり、日刊世界の危機があくびしながら消去されたり、ギャラクタスのおじさまがお茶を楽しみに来たりと彼女たちの基準で静かな場所ではあるのですが、今日は何やら様子が違うようです。
「あぁぁぁぁあああああ!!!!! お母様に空間転移の管理権渡した人誰よ! 明らかに人手足りないじゃない!!!」
「お姉さま大変です! 厨房がノイローゼになってます! 『こんなんじゃママに出せないよぉ』とか言って全員泣きだしました! 私も泣いていいですか!」
『姉上こっち手伝って! 明らかに関係ない人がこっち来ようとしてるんだって! だから大邪神先輩の誕生日は今日じゃないって! ちゃんとその日にはケーキ送るからコナイデ!!!』
正に阿鼻叫喚、いやそこまで酷くはないのですがとにかく大変なことになっているのは確か。司令塔であるイヴの妹たち全員が頑張って仕事をしているのですが、愛の大きさ故に規模の設定を間違えたのか色んな所で戦場と化しています。
飾りつけをする班は一つ一つの作業に手を凝り過ぎて沼った結果『こんなんじゃ喜んでもらえないぃ』と号泣し始めましたし、厨房は厨房で『わ、私たちはまだ。まだいけるはずなんだ! 最高をお出ししなくてどうする!』と復活したのはいいですが、鬼でも宿っているかというような表情で調理開始。味見要因として半ば拉致されたアベンジャーズメンバーの方々が口を押えて、まるでシャワルマを食べたかのような顔をしていることからどれだけ味見させられたのかは言わずともわかるでしょう。
あとパティシエ部門の子たちは何を考えたのか作り上げたケーキに顔から突っ込んで号泣してますし、プレゼントとして彫刻を彫ろうとした子は数か月彫り続けていた作品を地面に叩きつけてしまいました。プレゼント班は未だに親愛なる母上の欲しいものが解らず考えすぎた結果回路がショートしていますし、外の世界から侵入者を防ぐために配置されていた警備班はなんかヤバいウマ耳の奴に襲われてるみたいです。
「えぇいッ! 落ち着きなさい妹たち! もう時間はないのですよ! 数か月前から用意しててどんな状態ですかこれは! もう! 今日が! お母様の誕生日なのですよ! ししし、しっかりしなさい!」
混乱を押さえつけるために声をあげる彼女でしたが、明らかに彼女もテンパっています。さっきから情報整理のために使っているタブレットはずっと上下逆ですし、使用している生体ユニットからなんかヤバめの煙が上がっています。
ま、それもそのはず。なんてったって今日は彼女らのお母様こと大宙つぐみの誕生日なのですから。
一度目の世界ではニンジャを始めとした国内の問題や、アベンジャーズたちを襲う世界的な問題。睡眠時間を無理やり削りながら戦い続けていた彼女たちにはゆっくりと誕生日をお祝いする、という時間はありませんでした。そしてすべてが終わった後も、それは同じ。彼女たちの母親に残された時間は永遠の時を生きる者にはあまりにも短いものでした。
なのでもうそんな心配をする必要がなくなった二度目のこの世界で自分たちができる最高の用意を済ませ大好きな母親に喜んでもらおうと、ずっとサプライズパーティーの用意をしていたのですが……。
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