ハーメルン
前世から愛をこめて
わるいのわるいのとんでゆけ





それまで青色に輝いていたリアクターが赤く輝きだす。




『脳波異常を検知、自動的に全権利をマスターから委譲。状況からの速やかな脱出を図ります。』

「ちょっとイヴ、イヴ! 動かないんだけど! 権限返して!」

『できません、脳波及び他バイタルが正常になるまで全権限の返還は過去のマスターから禁止されております。付け加えましていくらスーツ内部で叫ばれても外部に聞こえないようにシャットアウトさせていただきました。』


体の意思に反してスーツが勝手に動きだすわけなので、内部に何かしらの声というか叫び声が響きわたるがイヴによって遮断されているため外から見ればただ赤く光り始めただけ。イヴもAIなので洗脳されたマスターが何を言っても無駄なだけ。


『対洗脳プログラム起動の前にまず現状の打破からですね。』


タイフォイドにスーツの頭部を両手で触られた瞬間、正確には搭乗者の脳波パターンに明確な異常を検知した瞬間、そのシステムは起動する。

自身が洗脳された場合、ヒドラなどのヴィラン組織にトニーに劣るとしてもオーパーツじみた技術群をそのまま受け渡すことになる。またアベンジャーズの敵として洗脳が可能なロキやワンダも登場し、実際にホークアイなどがその被害に会っている。

このスーツを作り上げた時点では、まだアイアンマンMark3よりも総合的に格下のスペックしかないが、それでも一般人からすればとんでもない脅威である。洗脳対策をおろそかにしておいて良い訳がない。

脳波に異常、洗脳された時。搭乗者の操縦権などのすべての権利を剝奪し、AIであるイヴにその権利が渡る。イヴはその権利を使い状況の改善を図る。そういうシステムだ。

イヴも洗脳もしくはハッキングで汚染された場合? それはもう諦めるしかないべ。


『エレクトリックグレネードの使用は敵性勢力の残存数からロック、残りの武装で現状を打破します。』


彼女の思惑通りに洗脳が決まり、思わず笑みを浮かべたタイフォイドだったがいきなり目の前の鉄女(名前未定)の胸や目の光が赤に変われば警戒を顕わに。洗脳によってかなりいい駒を手に入れられたとウキウキだったが暴走する駒など不要。地面に放り投げた刀を拾い上げ心臓に付き刺そうと動き出す。

が、体勢が不利。

タイフォイドの目的は目の前の鉄女を殺すことだがイヴは速やかな逃走。目的の違いもあってかタイフォイドが刀を手に取る合間に距離を取られてしまった。


「洗脳は確実に決まったはずなのにねぇ……、誰だいお前?」

『別に誰でもよいかと。』


機械音声だが明らかな拒絶。


『では大変申し訳ありませんが失礼させていただきます。』


その言葉と共に肩の発射口が開き、グレネードが発射される。


「ッチ! またか!」


先ほどの放電する弾薬を見たせいか全力で距離を取ろうとするタイフォイド、しかし今回の弾薬はスタングレネード。地面に接地した瞬間に現れるのは電撃ではなく強烈な爆発音と閃光。

周りを囲んでいたニンジャにもその閃光を食らい行動不可、イヴはその隙に逃走するわけである。

先ほどの戦闘で食らった投げナイフのせいで右側のリアクターの調子がいまいちだがフルパワーで上へ。天井を突き破って夜の大空へ飛び上がる。

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