ハーメルン
百合好きなことを隠したい少女は、周りをヤンデレややばい人たちに囲まれている。
第2話 彼女の1日は大変だ
朝。窓から差し込む光が私を起こす。
「ん……んう。朝だ……またお姉ちゃんか」
目が覚めた私の体に腕が抱き着いており、抱き着いてるのは姉、橋本真奈だった。抱き着かれるのは大好きだったりするけど、緊張するし、平常心を保てなくなりそうだからやめてほしいんだけどなあ。ていうか、なんでお姉ちゃんは毎回私を抱き枕にしてるのだろうか。周りに姉妹のいる人がいないから分からないけど、姉妹ってこういうものなのかな。何か違う気がする。なんとか引き離そうとしても、彼女は強引にしがみついてくる。
「……はあ。抜け出せないか」
正直言うと、お姉ちゃんとこうしてくっつけるのはすっごく嬉しいから、このままでも良いんだけどね。でも、そろそろ起きないと遅刻してしまう。私は姉の体を揺さぶった。
「お姉ちゃん!もう起きる時間だよ!」
「あと5分……」
「だめー!早くしないと遅れちゃうよ!」
「ああ……。ごめんね。いつも迷惑かけて」
「別にいいよ。それより、早く朝ごはん食べよう。株とか色々あるんでしょ」
「株なんか1日見なくても余裕だよ。でもそうだねえ。雪菜ちゃんと離れるのは辛いけど、学校とかあるし、起きますかー」
お姉さんはそう言っていやいやそうにしながら起きる。やっと離れるのかと思うと。
「ちゅっ」
「!!!???」
いきなり私の唇にキスをしてきた。しかも、ベロまで入れてきて、私の口内を舐めまわしてくる。ダメ、こんなことされたら、私の理性が保てなくなる。
「んうう……ちゅ……れろ」
「んう……んんん!」
私は必死の思いで腕に力を込め、彼女を無理矢理突き放した。
「ぷはー。雪菜ちゃん成分補給完了!」
「もうううう! ふざけたことしてないでさっさと起きて服を着る!」
朝から色々とぶっ飛びすぎてる。こういうのは心臓に悪いからやめてほしい。起きた後は朝食を済ませ、私は家を出て高校へと向かった。
高校に着いた後は上靴に履き替えて自分のクラスの教室に入り、香織の隣の席に座る。
「おはよー雪菜ちゃん」
「おはよー香織」
彼女はにやにやしながら私の顔を見つめている。
「香織。どうかしたの?」
「いやあ。今日も可愛いなあと思って」
「ありがとう」
「ふふふふ。ほーんと可愛いよねえ。日を追うごとに可愛さが上がってる気がするよ」
彼女は朝会った時に必ず可愛いと言ってくれる。本音だということは分かるし、可愛いって言われるのは好きだけど、なんでここまで言われるのかが分からない。私の容姿って銀髪なこと以外はそこまで飛びぬけてるわけでもなさそうだけど。まあ、褒められるなら素直に受け取っておくことにしようかな。
朝のHRが始まるチャイムが鳴ると同時に担任の教師が入ってくる。HRでは先生の雑談や学校に関する近況報告があるだけで、いつも通りだった。HRが終わった後の1時間目は体育だったため、私たち女子は専用の更衣室に行って体操服に着替える。その際、私は香織と一緒に人目のつかなさそうな所に向かって着替える。
「ここなら見られることはなさそうだね。雪菜、早く着替えよう」
「うん!」
私がここで着替えるのには理由がある。初めての体育で着替えることになった時、体つきのせいかやたらとじろじろ見られるのが凄い嫌だったのだ。そんな時に香織ちゃんがここを見つけてくれて、以降はここで着替えるようにしている。
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