第6話 怠慢王子は追放ですわ
リディアが11歳になった年の3月末、4月から魔法学園に通うため、リディアは帝都に家を買う。この世界の暦は全て現代日本と合わせられており、6歳から10歳までの児童は全員無料で小学校に通うことが出来る。……残念なことに多くの農村部では子供が労働力であるため、小学校に通っている生徒は少ないが。
そして11歳から15歳までの帝国民全員は、試験に合格すれば中学校に通える。魔法学園は中学校に相当するので試験があるが、前世の知識を持つリディアにとっては簡単過ぎる試験のため、主席で合格していた。在籍期間は3年間であるため、リディアは14歳までこの魔法学園に在籍することになる。
入学まで暇を持て余したリディアは、帝都に買った家の中で奴隷のメイと、使用人のマキア、マキナの3人とくんずほぐれつをしていた。
「メイ、その剣筋ですと皮膚の皮一枚も剥がせませんわよ」
「……それはリディア様の皮膚がおかしいだけです。あと血は流れてます」
「ふんぬぬぬ」「……ぜーはー」
「マキアとマキナは体力がありませんわね。ほら、もっと強く腕を逆方向に持って行きなさい」
メイの剣は、リディアの首筋に当たるが僅かに血が流れるだけで刃が止まる。マキアとマキナはそれぞれリディアの右腕と左腕に抱き着き、腕を逆側に折ろうとするが逆に持ち上げられる。
リディアが帝都に買った家は、この4人が住むにはあまりにも広い家であり、運動できるスペースも十分にある。同じ学園に既に3人の手駒がいる状況のため、虐めは容易く出来るだろうなとリディアは内心ほくそ笑んでいた。
「そう言えば噂で聞いたのですが……リディア様が破壊した魔法試験の的、他にも破壊出来た人は2人いたようです」
「へえ……それは面白い噂話ですわね。破壊した人の名前は分かりますの?」
「1人はサウスパークから来たユースケという名前の黒髪黒目長身男子らしいです。……サウスパークから来るって珍しいですね」
「ああ、資料にありましたわね。筆記試験では最下位との話でしたが、魔法試験で満点だったというわけですか」
この4人の中で一番ヒエラルキーの低いメイはよく買い出しに行くため、そこで道行く人々の噂話を収集している。犬の獣人であり、耳が良いメイは遠くの話し声まで良く聞こえる。
またほかの3人も、やることがないからと言って決して引き籠っているわけではない。特にリディアは金が黙っていても入ってくる状態のため、ひたすら近くの店で豪遊を続けた結果、あっという間に高級店が並ぶ通りのお得意様となっていた。
良くも悪くも、お金は人を引き付ける。だから襲撃者だって、引き寄せてしまう。
唐突に、玄関が破壊される音を聞いたリディアを除く3人は戦闘態勢に入る。一方でリディアは玄関から襲撃してくるとは律儀な人達だなあと呑気なことを考えていた。
「おい、我が訪ねてきたのに居留守とは大した度胸だな」
「……どちら様で?」
「貴様の先輩となる3年のリンデン=ハインだ。
御託はどうでも良い。金を出せ」
やって来たのはリディアも資料で確認したことのある、ハイン王国の長男にして学園内の大きな派閥のトップであるリンデンだった。帝国内部には幾つかの王国があり、その中の1つであるハイン王国は規模、人口共にトップクラス。
そんなハイン王国の後継者は散財癖が酷く、実家からの仕送りが絞られているため、散財するために派閥メンバーや金を持っている貴族相手に献金の強要を繰り返している。当然学園も問題視しているが、王国の後継者に対し強く指導出来る者が少なく、実質野放しにされていた。
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