十六話
「もう日が暮れ始めてるよっ!?」
「キャンプ場まではどのくらいあるんだ?」
「大体一キロ!」
「結構ある…!!」
休憩所で寝過ごし、大幅に遅刻した四人。
慌ただしく、ほったらかし温泉からキャンプ場へと向かう。
そんな中。
「おんたま揚げ揚げたてだよー。買ってって~」
『……』
ぴたりと動きが止まる。
顔を見合わせる四人。うむと頷き合う。
そして。
「まいどー」
「急ぐぞお前らっ!!」
「「「おーっ!!」」」
☆
ほったらかし温泉を後にして、富士塚通りへ戻り、イーストウッドキャンプ場への道を進む一行。
辺りの道路脇には木々が生い茂り、山肌が直に覗く。足元の舗装路もおぼつかない。
辛うじて道、路…?と呼べなくもない有様だ。
「なーあきー」
「なあ大垣」
「ねえあきちゃん」
三人が口をそろえて言う。
「「「こっちで合ってるの?」」」
加えて、ほっとけや温泉から出た時は登っていたのに、先ほどから道は下っていた。
三人が不安を覚えるのも当然と言える。
「んー、地図ではこっちになってんだけどなぁ……」
先導しスマホの地図アプリとにらめっこしながら、千明が自信なさげに答えた。
「日も暮れてきたし」
「ちょっと暗いね……」
「黄昏時ってやつだな」
夕方と呼ぶには薄暗すぎる山道。
四人の他に人気は無く、時折木々のさざめきと野生動物の鳴き声が聞こえるのみだ。
「「……」」
心細くなったのか、なでしこは、千明の隣でスマホを覗き込むコウタロウと少しだけ距離を詰めた。きゅ、と袖口をつまむ。
あおいは千明の方に寄ろうとして少し逡巡して、やっぱり千明に近寄った。
「私、暗い森って苦手なんだよね……」
「林間キャンプ場全部NGじゃねえか」
おっかなびっくりと言った様子のなでしこ。
寿司屋に行ってさあ食べるぞという時に「自分魚介ダメで……」と言うようなものである。すかさず千明がツッコんだ。
「なでしこは森に限らず暗い所苦手なんだよな」
「コウくん! もう、あえて言わなかったのにー…」
変に意地を張ったなでしこが頬を膨らませる。
その反応が既に肯定してしまっているようなもので、あーと頷き納得する千明とあおい。
「なでしこちゃんホラー映画とか苦手そうやもんなぁ」
「んで夜トイレ行けなくてコウタロウについてきてもらってそう」
うんうんと頷きあう二人に、コウタロウは笑顔で答える。
「二人とも……正解!」
「「やっぱり~」」
「もう! コウくんっ!!」
「「「ハハハハハ」」」
なでしこが憤慨する様が全然似合ってなくて、またどこか可愛らしくて。三人は思わず声をあげて笑った。
「……って。もしかしてあれじゃね?」
千明が前の方を指さした。
つられてその先を見る。
【イーストウッド キャ…】
随分と古ぼけた看板で、後ろの方は掠れて文字が読めない。
その有様を見た一行は口をそろえた。
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