三話
「それじゃあ改めて、私は犬山あおい。こっちは大垣千明」
「よろしくな」
野クルの二人が先んじて名乗ると、浜松コンビもそれに続く。
「各務原なでしこです! よろしくねー」
えへへと笑いながら自己紹介を済ませるなでしこ。
そこで、何かに気付いたようにはっと顔をあげた。
「あっ、こっちはコウく…じゃなくて、守矢コウタロウくんだよ!!」
「うん、知っとる」
「知ってるぞー」
「少なくともなでしこより数か月は長くこっちにいるぞ俺」
「そうでした……えへへ。あおいちゃんが千明ちゃんの紹介もしてたから、つい……」
恥ずかしそうにはにかむなでしこ。
癒される。可愛いは正義である。はっきり分かんだね。コウタロウは人知れず萌えた。
「「野クルへようこそー!!」」
「ありがとーっ!!」
「とー」
場が和んだところで、千明とあおいが文字通りもろ手を挙げて二人を歓迎する。
が、
「ふがっ」
「ヴんッ」
どすっ、という擬音と共に、千明の上がった手があおいの顔に、あおいの膝が立ち上がった千明のレバーに入った。
「うお、大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ。問題ない……」
「心配してくれてありがとなー」
「なんでこの部室、こんなに幅が……」
「狭いかって?」
二人の様子を見ていたなでしこが、棚を含めれば人一人通るのがやっとというレベルの横幅を誇る野クルの部室に眉を寄せる。
「もともとここ、使っとらん用具入れだったんよ」
「用具入れ……」
「うん。あと、四月にうちらが作ったばかりのサークルで部員も二人しかおらんし」
「だが問題ないぞ守矢に各務原……」
二人に説明するあおいの後ろで眼鏡を光らせる千明。
「部室がいくら狭かろうがあたしらの活動場所は結局『外』だ!」
「「「たしかに」」」
声がハモる三人。
納得過ぎる答えだが、だとしたら部員募集の件どうしてだ千明。
「それに、各務原達が入ってくれるお蔭で、この狭い部室ともおさらばだ!!」
「「「たしかに!!!」」」
明るく声がそろう。
確かに狭いより広い方がいいに決まっている。大は小を兼ねるのだ。
そのままの勢いで外に向かう野クル一行。
外での活動ということで、全員ジャージである。道中は自然、野クルの活動について話が盛り上がる。
「なあ、野クルって普段何してるんだ?」
「いつもは落ち葉焚きだな」
「おちばたき……?」
「校内の落ち葉とか枝とか燃やして、コーヒー飲んだりしとるんよ」
「他には?」
「アウトドア雑誌読んだり……」
「アウトドア雑誌読んで、キャンプに想いを馳せたりしてるな」
「「えー……」」
「あからさまにがっかりすんな浜松コンビ」
「あ、ラーメンもあるで」
「「わーい」」
「ただのラーメン好きじゃねえか」
「失礼な。俺はラーメンではなくラーメンに喜ぶなでしこにだな」
「ただの幼馴染好きじゃねえか」
と、ここで四人は外に着いた。
眼前にはごみ一つ落ちていない綺麗な校庭。
「……落ち葉何もないよ?」
「昨日焚き火したからな」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク