ハーメルン
起きたらマさん、鉄血入り
12.弱肉強食を嘯くものは自らが弱者になる事を想定しない短慮な人間である

「クソ、クソ、クソが!連中俺たちを嵌めやがった!!」

怒りに口から泡を飛ばし、叫びながらクダルは機体を操っていた。普段からヒューマンデブリ達を先行させる戦術を取っていた彼は、幸運にも敵の罠であることを看破したデルマの声で止まることが出来たのだ。そして、目の前で行われた一方的な戦いを前に、自分たちが見事に嵌められたことに気づくと、激昂しながらもすぐさま逃亡を図っていた。

「使えねぇゴミ共がっ、貴重なMSがパァじゃないの!」

襲撃に投入した機体は10機。これはブルワーズの保有している戦力の6割に相当する数だ。幾らクダルの駆るガンダムグシオンが残っているとはいえ、半数以上の機体喪失が組織に甚大な影響を与える事は間違いない。今後の仕事における手間の増加、起こりうる縄張り争いを想像しクダルは頭を掻きむしる。

「舐めやがってゴミ漁り共がぁ。必ず、必ずこの報いは受けさせてやる――」

人間は衝撃的な事が起こると思考力が低下する。それが自身の想定外でかつ極めて不利益な事であれば尚の事だ。それは善人であれ悪人であれ逃れられない人間の生物的特徴と言えるが、この時ばかりは状況が悪すぎた。デブリを縫うように進み、母船が見えたその瞬間、唐突にコクピットに声が響いた。

『ふむ、思ったより随分奥に隠れていたな。ではミカヅキ、こちらは頼むぞ』

『了解』

声と共に接近警報ががなり立て、間を置かずグシオンに衝撃が走る。

『硬い』

頭を巡らし、クダルが周囲を見渡せば、こちらに向かってくる安っぽい白色のガンダムフレームと、母船に向けて突っ込んでいくヘキサ・フレームが目に入った。

(こいつら俺を泳がせて!?)

まんまと母船までの案内役にされたことに気付き、クダルは歯噛みする。沸騰しかける脳を唇をかみしめる事で強引に引き戻し、状況を再確認した。

(敵の数は2機、母船にはまだMSが残ってる。そっちはブルックに期待するしかねぇ。問題はコイツ!)

デザインこそかけ離れているが、クダルは目の前の機体が自らの駆るグシオンと同族であることを即座に看破した。そしてそれ故に彼は焦りを覚える。

(動きからしてネズミが使っていやがるのは間違いねぇ。それなのになんだコイツは?えらく戦い慣れしてやがる!?)

混沌とした時代である。荒事を生業とする人間は決して少なくないし、中にはギャラルホルン崩れのMS戦経験者だって皆無とは言わない。そもそも海賊同士でも縄張り争いなどで交戦する機会もあるのだから、それなりに腕の立つMSパイロットという存在が居ない訳ではないのだ。だが、目の前の機体を駆るのは宇宙ネズミ。阿頼耶識システムを施術されるような、そうでもしなければ使い物にならない連中だ。そもそもヒューマンデブリという潜在的に反乱の可能性がある存在を多用する彼らの常識からすれば、それらを強化すると言うのは自分の首を絞めるのと同義である。そんな事を行うなど馬鹿のすることだ。だが、その馬鹿な行いがどのような結果を生むのか、彼は身をもって知ることになる。

『硬いけど、それだけだね』

マン・マシン・インターフェイスとして見た場合、倫理的観点を無視すれば阿頼耶識システムは極めて優秀なシステムである。空間把握能力の向上は通常センサーが検知、警告、それをパイロットが認識し確認し対応するという極めて煩雑な作業を一瞬で完了させることが出来る。加えてパイロットが自らの肉体を動かし、操縦桿に伝え機体を動作させるという何重にもタイムラグが存在する操縦も、思考と同時に実行されるのだから比べる事すらおこがましい。これらの差は、パイロットの多少の技量差など容易に覆すし、互角あるいは格上ならば絶望的な差として立ちはだかる事になる。

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