年下の女の子に負けて、恥ずかしくないの?
「――――こらぁー! そこのザコちんぽぉ! 止まれぇ~!」
その日、ベトナム帰還兵のジョン・ランボーはビクッと驚き、その場に立ち止まる事となった。
何年かぶりに戦友に会おうと、ひとり見知らぬ土地を訪ねて来たは良いが、ソイツは既に亡くなっているとご家族の方に告げられてしまい、「どうするかな~」とトボトボあてどなく歩いていたのだが……、そこにきてコレである。
なにやら元気いっぱいな、自信にあふれた小生意気な声。だがまるでパッと花が咲いたかのような、愛らしい響きを併せ持っている。
そんな可愛い声に、いま突然、背後から呼び止められたようなのだ。
聞いた瞬間に、それが「10歳ほどの幼い少女の声だ」という事を、ランボーは瞬時に悟ったのだが……、なんか聞き慣れない単語が一部交じっていたので、ポカーンとしてしまう。
なんだ、ザコちんぽって。人生史上はじめての言葉だ。
「お、ちゃんと止まってくれたのね。かんしんかんしん♪
おはようおじさんっ! こんな所で何をしてるのぉ~?(はぁと)」
天使がいる――――それが第一印象だった。
彼が戸惑いつつも背後を振り返った途端、まっさきに目に飛び込んで来たのは、小さな女の子の姿。
活発さを感じさせるヘソ出しキャミソールと、白い生足がまぶしいハーフパンツ。“エロかわ”を体現したような恰好。
長くて艶やかな赤い髪は、二つのボール型の装飾が付いた髪留めによって、一部をサイドテールにまとめられている。
それが背中のランドセルとあいまって、子供らしさを演出。
寡黙で人見知りなランボーをしても、見ているだけで微笑ましい気持ちになる。
一見して、“可愛らしい女の子”。いわゆるザ・女の子だ。
きっと沢山ボーイフレンドがいて、クラスのリーダーでもやってるんだろうな~って感じの、とてもキラキラした雰囲気の子だった。
もし“花の化身”というものがいるのなら、それは彼女のような姿をしているのではないだろうか? ランボーはそんな印象を受けた。
しかしながら……何故そんな女の子が、自分になど声を掛けたのだろう?
こちとら髪も不精髭もボーボーの大男で、しかも長旅のせいで薄汚い身なりをしているというのに。
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