ハーメルン
ランボー / 怒りのメスガキわからせ
自分に言い訳すんのが、あんたの特技よ。







「さて、少々困った事になったか……」

 メスガキ大佐が、萌え袖のおててをウムムとアゴに当てて、どこを見るでもなく呟く。
 先ほど二人がおこなっていた無線での会話が途絶えてから、早1分少々の時が経過。
 今この場は、音もなく静まり返っている。

 ここにいる誰もが、今も満ち足りた顔のまま無線機を胸に佇んでいるメスガキ刑事……彼女が幸せそうに瞳を閉じている姿を、言葉なく見つめていた。

 まるで聖母のように尊い、恋する乙女のやわらかな笑み。
 それは壊すことを躊躇ってしまう程の、侵し難い美しさ。神聖なまでの空気に思えた。

「同志よ、説得は失敗だ。こちらへ来い」

 けれど、そんな中で一人、大佐だけが声を上げた。
 皆が「ほわわ~ん♪」と良い気分に浸っていた所を、容赦なく雰囲気をぶち壊し、現実を突きつける所業。

「逆探知に成功したぞ。彼は北西の方角にいる。
 地図を見ろ、同志メスガキ刑事(デカ)。おそらくこの辺りだろう」

 テントの壁に張り付けた地図を指さしながら、不躾に彼女を呼びつける。
 そんな空気の読めなさに、みんなはイラッと反感を覚えたが、当のメスガキ刑事はパッと夢から覚めたかのように、即座に頭を切り替えてボスとしての顔に戻った。
 今この場でただ一人、大佐だけが現状をしっかりと捉え、次を見据えているのだ。自分も追従しなければと、しっかりした足取りで彼女の下へ向かう。

「夜明けを待ち、人員を総動員する。
 それに加え、幾つかの手を打つつもりだ。任せてもらえるか?」

「……ええ。そうね、おねがい」

 大佐の顔ではなく、じっと地図の方を見つめながら、言葉少な目に了承。
 真剣ながら、どこか憂いを含んだ表情。
 自分は責任ある立場であり、彼を捕まえるのは使命だ。ゆえに反対はしない。
 けれど、先ほど「必ず行く」と言ってくれた彼の事を思い、ほんの少し言葉を濁している様子だった。彼への信頼や、心配がそうさせているのだろう。

「ふむ……まずは謝罪しておこうか。
 本来ならば、わたくしが彼を説得して終了、のハズだったからな。
 さんざん大口を叩いておきながら、面目次第もない」

「…………」

「交渉に応じた彼を、一人で迎えに行き、油断させた所をふん捕まえる予定だった。
 わたくし自らが考案し、長年磨き上げてきた“エロCQC”が、ついに日の目をみる時が来たと思ったが……、あてが外れてしまったよ。笑ってくれ」

 ちなみに【Close-Quarters Combat】とは、軍隊等で使用される近接戦闘術のことだ。
 メスガキ大佐が使うエロCQCは、それを更に改良した物であり、主にちんぽ掴んだりベロチューしたりして、瞬く間に“童貞を殺す”ことを目的として編み出された。
 そんなモン使うなという話だが。

「どうやら彼は、わたくしが知っているランボー様とは、少し違うようだ。
 諸君らと接した僅か数日、その間にお変わりになられたように思う。
 誤算だったよ……。必ず説得できると踏んでいたのだがね」

 彼の信頼を得られるのは、わたくし位のものだ。

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