最終話 記憶のオーバーロード
シズ・デルタは三百あった最後の設問に取り掛かろうとしている。
着手し始めたときは少しでも早く任務を完了すべく色々な処理手順を試みてみたが、あまりにも文脈に依存することが多すぎて、結局すべての設問に総当たりで挑まざるを得なくなり、十五日もの時を費やすことになってしまったことに彼女は忸怩たる思いを抱いている。
一方で、そういった試みを倦まず弛まず飽きず懲りず正確無比に繰り返すことができるのは、自動人形である彼女の強味であり、また存在意義そのものでもあった。
「……第三百問、アインズ様、すなわちモモンガ様のご発言の検索。」
最後の問いは一つ前の問い同様に<アインズ・ウール・ゴウンの日誌>に記録された当時のモモンガの発言中に、ある事柄についての言及があるか否かを問うものであった。
シズは、黙々と人物別の章、モモンガの節を時系列に丹念に読み解いていく。直接的な言及はもちろん、その事柄について暗示するようなものも含め、見落とすことは許されない。
全量を一旦記憶することが出来れば処理時間が向上することはわかっていたが、日誌の情報量は膨大で空き容量不足を引き起こす恐れもあったし、場合によっては含意を読み解くために他節と相互参照することも求められ、そうなれば全暗記での処理はなお不可能だ。
「検索……完了、
検証……完了、
第三百問への解答……否。
……あれれ?」
シズは、自身の眼帯をしていない方の瞳から、一筋の液体が流れていることに気づく。
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