第7話 アインズ様の最も長い一日・中編
(毎度のことながら変な絵面になってるよなぁ……)
とアインズは他人事のように思った。
骸骨姿の自身は魔法で作り出した即席の玉座に腰掛け、横にコキュートスが屹立しているところまでは良い……いや、これだけでも十分不気味だ……として、目前には正座させられたまま項垂れる五人の男女。
超ご機嫌のアインズとしては、彼らをたちまちに殺すつもりはまったくない。
世界級アイテム<聖者殺しの槍>、同じく世界級アイテム<傾城傾国>を、頼んでもいないのに一時に彼の元へ届けてくれた連中を、感謝こそすれ殺す謂れはなかろう、と思われたからだ。
それに。
この連中にはいささか同情すべき点もある。
そもそもこいつらは、けしからんことに世界級アイテムの何たるかをまったく理解していない。
世界級アイテムは、その名が示す通りユグドラシルにおいて最上位に位置するアイテムであり、均衡破壊の異名が雄弁に語るように、ゲームバランスを崩壊させかねない強大な効果を有している。
たとえば<聖者殺しの槍>は、使用者の原則復活不能の死を代償に相手を道連れにする最大最強の自爆兵器であり、このとき使用者と被使用者の間のレベル差はまったく顧慮されないから、本当に文字通りのバランスブレイカーだ。
一方で、強大な力があるがゆえに制約されるところも多々あり、その最たるものは、世界級アイテムで何かを仕掛けたときに相手も世界級アイテムを所持していた場合、その効力が無効化されると共に所有権が仕掛けられた側に移る、という仕様であり、老婆とアインズの間で起こった出来事がまさにこれに当たる。
世界級アイテムに限らず、やたらめったら強力無比なアイテムの所有を望み誇示したがるプレイヤーの多かったユグドラシルにおいて、アインズは……厳密に言えばギルドの軍師と呼ばれたぷにっと萌えは、少し異なる考え方を有していた。
極言すれば、世界級アイテムは使うもの、ではなく、匂わせるもの。
世界級アイテム同士の衝突がかくなる結果を産む以上、世界級アイテムそのものよりも、相手が世界級アイテムを持っているか否かを前以て知っていること、の価値が高まるのは当然の帰結である。そしてそこからは、自身が世界級アイテムをさも保持しているように見せかける、あるいは逆に、まるで持っていないかのように思わせておいて実は持っている、さらにはその裏、また裏の裏をかく、という戦術が派生していく。
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