第8話 アインズ様の最も長い一日・後編
「きゃははは!
楽しいですわー、アインズ様ァ!」
真紅の全身鎧を身に纏った完全武装で、真祖吸血鬼シャルティア・ブラッドフォールンは、吸血槍を嵐のように容赦なく突き立てまくった。
「あぁ、楽しいなシャルティア。
だが、そろそろ終わりにしよう。
超位魔法!」
「あらぁ、アインズ様?
どうしてここで発動までに時間のかかる超位魔法を?」
(……そりゃ、おまえが効果範囲から離脱する時間が要るからに決まってんだろ?)
守護者統括アルベドからシャルティア謀反の急報を受け、縋り付く漆黒聖典五名を振り払ってナザリック地下大墳墓に帰投したアインズを待っていたのは、つまりのところは労働争議だった。
シャルティア・ブラッドフォールンは、通常兵器の範疇で言えばナザリック最強の個体戦力、ということになる。
実際のところ、ナザリックには現実世界の戦略熱核兵器に相当する……つまり、確実に相手を殲滅可能だが、それは同時に自分たちも含めた破滅にも繋がりかねないのでおいそれとは使用できないもっとヤバい連中がいくらか存在するが、転移直後、ナザリック全域を隈無く調べ上げたアインズは、それらやあれらにはいわゆる自我の存在を認めなかったので、孝行息子の経費節約の進言もあってその大半を機能停止させ凍結状態に留めている。
結果、シャルティアは名実共にナザリック最強の個、ということになったのだが、使い所がない、という意味では、シャルティアとて突き詰めれば核兵器の類であった。
有り体に言えば阿呆の子だ。
危なっかしくて独り歩きさせるなど想像の埒外である。
さりとて、それらやあれらとは異なり彼女には列記とした自我が認められ、なによりアインズにとっては親友ペロロンチーノの娘でもある。いや、だから危なっかしいのだが、危なっかしいからといって、まさか座敷牢に押し込めておくわけにもいくまい。
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