妨害
九校戦三日目。
男女アイス・ピラーズ・ブレイクと男女バトル・ボードの各決勝が行われる三日目は、九校戦前半のヤマと呼ばれている。
「はて、どうしようか」
第一高校の勝ち残り状況は、男子アイス・ピラーズ・ブレイク、男女バトル・ボードがそれぞれ二人、女子アイス・ピラーズ・ブレイクが一人。
秋水は組み合わせ表を見て悩んでいた。
服部が男子第一レース、摩利が女子第二レース。千代田花音が女子第一試合、克人が男子第三試合。
「時間的に……二つ同時に直接観るのは難しいかな」
競技によって開始時間や試合時間も異なるとはいえ、服部と千代田の試合を観戦するのは不可能だ。同時に観戦する方法が無いわけではないが、妨害があったとしても、それに反応することが難しい。となれば、外部からの干渉を受けやすいバトル・ボードの観戦をした方がいい。
そう思って服部の試合を観戦したわけだが。問題なく第一レースを走り切り、勝利した。
注意深く、さらには耳栓も外して、外部からの干渉に警戒していたのだが、その網に引っ掛かることはなかった。見ている限りでは、他の選手にも異常が見受けられることもなかった。
アイス・ピラーズ・ブレイクの方でも何か異変があったなどという騒ぎはなかった。千代田は順調にコマを進めていると見ていいだろう。
そのまま摩利のレースを深雪たちと観戦するために席を確保。開始直前、といったところで達也が合流した。
達也曰く、真由美に引き摺られる形で作業車へ連れていかれ、彼女の用事に付き合っていたとか。
バトル・ボードの準決勝は一レース三人。それを二回。それぞれの勝者が一対一で優勝を争うことになる。
他二人が緊張で顔を強張らせているが、摩利は不敵な笑みでスタートを待っている。
スタートの合図であるブザーが鳴る。
予選と同じように先頭へと躍り出る摩利だが、その背中にぴったりとくっつく選手がいた。
「やはり手強い……!」
「さすがは『海の七高』」
「去年の決勝カードですよね、これ」
第七高校は水上・海上に特化した魔法を教えている。
その証拠に、前を走る摩利と同じスピードで走行している。本来ならば、摩利の方が引き波の相乗効果もあって有利なはずだが、第七高校の選手は巧みなボード捌きで魔法の不利を補っている。
スタンド前の蛇行ゾーンを過ぎ、差もほとんどつかないまま、コーナーに差し掛かる。
コーナーを過ぎれば、秋水たちの席からは見えなくなる。そのため、用意されている大型のディスプレイに映されているコーナー出口の映像に目を向けようとした瞬間、耳に届く熱気の中に混じって――
バチッ、と何かが弾けるような音が聞こえた。
「あっ!?」
観客席から聞こえる悲鳴。急いでコーナーに視線を戻すと、大きく体勢を崩していた七高選手がいた。
「オーバースピード!?」
通常、コーナーを曲がる際には減速し、曲がったところで加速の魔法をかけるものだ。加速したままコーナーに突っ込めば、間違いなくフェンスに衝突する。
七高選手のボードは水をつかんでいない。オーバースピードというよりは、もはや前に飛んでいる、といった表現が正しい。
彼女が突っ込む先には、減速を終え、次の加速に入ろうとしていた摩利がいた。
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