新人戦 開幕
九校戦四日目。
本戦は一旦休み。今日から五日間は一年生のみで勝敗を争う新人戦が行われる。
ここまでの成績は一位である第一高校は三百二十ポイント、二位の第三高校は二百二十五ポイント、三位以下は団子状態の混戦だ。第一高校が大きくリードしているが、新人戦の結果次第では逆転を許してしまう状況だ。
新人戦のポイントも二分の一とはいえ、総合順位に関わってくる。一年生にとっては新人戦優勝は自分の栄誉となる。気合の入り方は本戦に見劣りすることはなかった。
今日の種目は男女スピード・シューティングの予選、及び決勝と男女バトル・ボードの予選だ。
スピード・シューティングは決勝まで行うこともあってか、女子が午前、男子が午後に全ての試合をすることになる。バトル・ボードは一日かけて行うことになっている。試合の出場順次第では、知り合いの観戦ができない可能性がある。
「と言っても、森崎さんは結果を楽しみにしていてほしいって言ってたからなぁ」
森崎は優勝したという結果だけを伝えたいのか、それとも試合を観られるのが恥ずかしいのかは分からないが、その意思を汲み取って、彼の試合を観戦するのは止めておこう。
「そうなると、北山さんと光井さんの試合を観戦するくらいかな」
ほのかが出場するバトル・ボードもまた一日かけて予選が行われるわけだが、彼女が出るのは午後の最終レースということもあって、雫が出場するスピード・シューティングと時間が被ることはない。
「後ろ、座らせてもらうよ」
「どうぞ」
既に席に着いている深雪たちの後ろに座る。
後ろから見ても分かるくらいに緊張しているほのかの様子に苦笑を浮かべた。
ランプが全て点った瞬間、クレーが空中に飛び出した。
得点有効エリアに飛び込んだ瞬間、それらが即座に粉々に砕けた。
次にエリアに飛び込んだクレーは中央で砕け散る。
「……もしかして有効エリア全域を魔法の作用領域に設定しているんですか?」
美月の問いに深雪とほのかが肯定した。
「雫は領域内に存在する固形物に振動波を与える魔法で標的を砕いているんです」
「より正確には、エリア内にいくつか震源を設定して、固形物に振動波を与える仮想的な波動を発生させているのよ」
得点有効エリアは空中に設置された一辺十五メートルの立方体。
雫が使っている魔法はエリア内部に一辺十メートルの立方体を仮想的に設置して、それの各頂点と中心の九つのポイントが震源になるように設定されている。また、震源から発生する波動は中心から六メートル。魔法を発動するたびに半径六メートルの球状破砕空間が形成されることになる。
各ポイントは番号で管理されている。精度を犠牲にして、速度に特化しているわけだ。
「なるほど。スピード・シューティングは選手の立ち位置や得点有効エリアとの距離、方向、広さは常に同じだから、座標を変数として毎回入力する必要がないんだね」
選択肢を最初から決めていれば、CADの照準補助システムで的確なポイントへと誘導してくれる。威力、持続時間も変える必要はなく、起動式で定数として処理されている。
制御面で神経を使うこともないため、魔法の発動だけに、演算領域のポテンシャルをフル活用することができる。
雫はCADの補助に従ってポイントを入力。ただ引き金を引くだけで標的を破壊している。
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