襲撃の代償
第一高校への襲撃は一通り鎮圧された。
学外からの侵入者たちは警察に引き渡されるため、教員たちが手元で拘束しているのだが、侵入者の半分が秋水の手で殺されていたのが明らかになった。
実験室を単独で守り切り、教員たちが実験室の現状を確認しに行った時には、廊下の至るところに血がついていたそうだ。
当の本人は何食わぬ顔で、保健室で行われている紗耶香の事情聴取に参加していた。
紗耶香の口から吐き出されたのは、摩利との一連のやり取りだった。一年前に起きた出来事で摩利の魔法剣技に憧れた紗耶香が彼女へ指導を求めたが、すげなくあしらわれてしまった、というもの。
しかしながら、それは紗耶香の勘違いだった。
摩利は単純な剣の技量では紗耶香に敵う道理がない。だから、自分よりも強く、紗耶香の腕に見合う相手を見つけろ、と。
一年間を無駄にしてしまったと後悔する紗耶香に声をかけたのは達也だった。
一通りの事情を聞いたところで、同盟の背後組織がブランシュであることが判明した。
「さて、問題は奴らが今、何処にいるか、ということですが」
どうやら達也は、ブランシュを見過ごすつもりはないようだ。
奴らの処分を警察に任せるつもりは毛頭ないだろう。
「……達也くん、まさか、彼らと一戦交えるつもりなの?」
「いいえ。交えるのではなく、潰すんですよ」
「危険だ! 学生の分を超えている!」
真っ先に達也の言葉に反対の声を上げたのは摩利だった。
学内だけとはいえ、常にトラブルの最前線に立っている彼女が、危険に対して敏感なのは至極当然だ。
「ウチは司波さんに賛成かな。奴らが牙を剝いてきたのなら、その牙をへし折るべきだと思うけど?」
「矢幡くんまで……私は摩利と同じよ。学外の事は警察に任せるべきだわ」
何故、真由美が話したことのない秋水の名前を知っているかは置いておくとして。
真由美は厳しい表情で首を横に振った。
「そして壬生先輩を、強盗未遂で家裁送りにすると?」
だが、達也の言葉に絶句する。
「なるほど。確かに警察の介入は好ましくない。だからといって、このまま放置するわけにはいけない。同じようなことを繰り返さないためにな。
だがな、司波、矢幡。相手はテロリストだ。下手をしたら命に関わる。
俺も七草も渡辺も、当校の生徒に命を懸けろとは言えん」
部活連会頭・十文字克人は、鋭い眼光を二人に向ける。
彼の言葉は納得のできるものだ。上に立つ者。守るべき命を背負っている者の見解だ。別に間違っているわけではない。
「とはいえ、そのまま放置、っていうわけには行かないでしょ。奴らは襲撃に失敗し、いくらかのメンバーを失った。そのうち、報復しに来ると思うよ」
「その大半の理由はお前だろう」
そう。侵入者の半分は秋水の手で殺されている。生徒は気絶にとどめられていたが、人を殺すことに全くの抵抗がないのは、まだ高校生なりたての人間には見えない。
既に八雲からその異常性を知らされている達也と深雪は、惨状を目にしたことがある故に、人を殺すことに抵抗がないものだと思っているが。
「だから? そもそも、司波さんがこの手の話をしなかったら、ウチ一人でブランシュを潰しに行ってるよ」
摩利が睨んでくるのを受け流しながら、秋水は心底つまらなそうな視線を真由美と克人に向ける。
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