ハーメルン
詐欺師トレーナーはトレセン学園で信頼を集めて大勢から大金を奪うつもりのようです
詐欺師トレーナー、サクラバクシンオーをマイルレースに出す
デビュー戦を華々しく勝利で飾ったサクラバクシンオーに対して、私は約束通りマイルレースへの出走を許可した。
ウマ娘がレースに出走する際はトレーナーがURA本部にある窓口まで行って申し込むか、事前に申請し後日承認されるかの2通りだ。
基本的に重賞レースは事前の申請が必須であるので、トレーナーは年間出走予定計画を立ててから一通りの申請をする。そして、ウマ娘の成長度合いによって柔軟に対応していくのだ。
私の場合はサクラバクシンオーの予定表なんて無駄なものを作るつもりは無かったので、今日は西新宿にある協会本部まで申し込みに来た。
(実に面倒で前時代的だ)
今どき確定申告すらインターネットで行えるにも関わらずわざわざ協会本部まで出向いて申請をしなくてはならないとは。
ある程度学園内で発言権を強めたら、こっちにも手を出してみる事にしよう。
まだ日は浅いが、ウマ娘やその背景組織に関わって分かった事がある。コイツらは金になる。数多の利権、グッズ等の売上、メディアへの影響力、どれもこれも凄まじい。その一つ一つを丁寧にゆっくりと支配し手に入れていくのはどんなに楽しいだろうか。想像するだけで愉快だ。
古臭い装飾の総合受付からエレベーターに乗り、窓口のある高層階へ。
降り立ったホールから見下ろす遠くの街並み、そして目の前に広がる新都心高層建造物郡。この眺めを独占して支配する奴らの1人はこの建物にいるのかと思うと不思議な気持ちだ。私が完璧な仕事をこなして手に入れる金の何倍もの額を椅子に座って判子を押すだけで得ているのだ。
と、そんな毒を脳内で吐いていると高笑いするあの小さな背が浮かんだ。そういう点で言うなら、ここにいる奴らより秋川やよいは上等だ。
必要な書類を窓口で渡して案内された薄いソファで待つ。ひたすらに待つ。本当に処理されているのか不安になり窓口に行くが、薄給の茶汲み事務員の老婆が『お待ちください』などと宣うばかりで一向に進まない。
詐欺師は忍耐、とよく言うが語弊がある。それは待つ事によって得られるもの、興奮があるからであり、待ったところで紙が1枚渡されるだけなのとは状況が違う。
今後は誰かを金で雇ってそいつを代理にしよう。そう固く誓って私は事務員を睨んだ。
ようやく学園に戻りトレーナー室へ入ると、何かを一心不乱に書くバクの姿があった。
「何をしているんだ?」
「あ、トレーナーさん! お疲れ様です!」
相変わらずうるさい。少しは労ってほしい。
バクは今書いたばかりのそれを私に見せつけてきた。それは圧縮された年間カレンダーのような物が3つ連なっており、そのマス目には小さな文字で細かく埋められていた。
「これは……出走予定計画……?」
「お忙しいトレーナーさんの代わりに作ってみました! いかがでしょうか!」
いかがでしょうか、と言われれば指摘したい点は山のようにある。なぜこうも字を間違えるのか理解出来ない。勢いで書いたのだろうが、そうすると中身がどうなのかも予想がつく。
(マイルレースばかりのジュニア級はまだいいとして、コイツ……ウマ娘の歴史を塗り替えるつもりなのか……? なんだこのローテーションは)
そこには現在、URAが定める中央重賞レースが全て書かれていた。短距離から長距離、ダートまで全て網羅されているのだ。
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