放つ者
「いくら何でも、こんな事ってある…?」
爆発から十数分後、警察・救急隊・消防隊が到着し被害のあった事故現場に突入していく。その姿を離れた場所で見つめていた美砂が思わずそうこぼした。美砂達六人は現場から少し離れていたため、直接的な被害は受けず怪我もせずにすんでいた。
「よりにもよって今日この日でしかも今の時間帯とは…さすがにお祓いでもした方がいいかも」
同じようにそちらを見ていたハルナが言った。
「時間通りに行ってたら私たちもやばかったかもね。今回ばかりは桜子に感謝しないと」
そう二人に話した円は横に視線を移す。そこには桜子・のどか・夕映がこの騒動で親とはぐれてしまった女の子の相手をしている。不安そうに何かを探す女の子を見つけた桜子が女の子に話しかけ、親とはぐれてしまったことを聞いた六人はお母さんが見つけやすいようにここで待っていようと女の子を説得して、避難者たちが集まっているこの場所で待機していた。
はじめは今にも泣きだしそうな女の子だったが、桜子たちの頑張りもあって今は幾分か落ち着いている。とは言えやはり不安はぬぐえないだろう。すると一人の女性がこちらにめがけて走ってくる。途端に少女の顔が明るくなるところを見るに、彼女が母親のようだ。勢いよく駆け出し女性に抱き着く女の子。それを見て一安心のハルナたちは頃合いを見て母親に事情を説明した。母親は何度も頭を下げ、女の子はハルナたち一人ずつにお礼を言っていく。それに笑顔で答えていると自分たちを呼ぶ声がした。
「みんな!良かった。けがはないみたいね…」
「明日菜!木乃香!」
唯一合流していなかった明日菜達と合流し、ハルナたちも笑顔になるが、桜子が明日菜達に声をかける。
「あれ?逢襍佗君は?」
すると二人は不安そうな顔をする。それを見た桜子たちは嫌な予感がした。
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時間は少し遡り、爆発直後。現場から少し離れた場所、崩壊した建物を見て騒然とする人ごみの中でマスクの男がその光景を見つめていた。やがて視線を移し、近くにあるフードコートの建物を見つめる。間もなくこちらも手筈道理になる、男はその時を今か今かと待っていた。しかし男が待っていた光景は一向に訪れず、不審に思いながらも次の予定のため男はその場から移動した。
男が進んだ場所は現在は観覧ができないことになっている、準備中のイベント会場のB館。そこにも先ほど爆破したA番館のように幻想種の展示品などが飾られていた。明かりは点いておらず、ガラスから差し込む外の光のみが中を照らす会場を歩きながら男は考えていた。
(どういう事だ、手筈通りならもうとっくに爆発してるはずだ。まさかミスったのか?)
そう考えに耽っていると男の横を大きな物体が流れていった。流れていった物体は男の少し前の床に落ちる。男がそれを確認するため視線を向けると、そこにいたのはマスクの男と全く同じ姿をして同じマスクをかぶった人物だった。
男がゆっくり後ろを振り向くと、そこには外からの光に照らされ、逆光により顔が見え辛いが体格からして男であろう人物が立っていた。その人物がゆっくりこちらに歩いてくる。少しづつ見えてきた顔は鋭い目つきをしていたがまだ若く、おそらく十代であろうことが分かった。その人物は紛れもなく逢襍佗祐だった。
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