事件はまだ終わらない
事件から数時間が経ち、時刻は18時。
今ネットやテレビはアウトレット爆破事件で持ち切りだった。今までも負傷者は出ていたが、今回はその被害の大きさ、そして何より死者が出ていた事と容疑者と思われる男が二人確保された事がさらにこの事件の注目度を高めていた。容疑者二人の取り調べが始まりさえすれば、より多くの情報が開示されるであろうことから、日本中の国民がその時を待ち望んでいた。
無論麻帆良学園もこの事件一色。今日明日は休日だが、明後日の月曜日からの事をどうするかと学園長をはじめとした教員たちが頭を悩ませていた。
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「………」
「………」
(な、なんか気まずい…)
ここは女子寮643号室。明日菜・木乃香・そしてネギが暮らしている部屋。いつも通りの時間帯に夕食をとる三人だが、雰囲気はいつも通りではなかった。
もう少し情報が出てから今後のことを決めるべきだとの学園長の決断がなされ、ネギは学校から帰宅。部屋を開けた時から感じた違和感。今日は皆んなで学園都市内をお出かけだと大層楽しそうに話していた木乃香を始め、明日菜もどこか心ここに在らずといった状態だった。流石に何かがあったことはわかるので、明日菜や木乃香に理由を聞いてみても「まぁ、色々あった」と言うなんとも抽象的な返答しか返ってこなかった。気にはなるがあまりしつこく聞くのもどうかと思ったネギは、それ以上そのことに触れないことにした。
いつもは会話の絶えないこの部屋だが、今は誰一人として口を開かない。普段と違い過ぎる空気にネギが息苦しさを感じていると、木乃香が何かを思い出したのか「あっ」と声を出した。
「木乃香さん、どうかしました?」
「ネギ君にお土産買ってきてたんやけど、渡すの忘れてたわ。ちょっと待っててな?」
席から立ち、お土産をとりに行く木乃香。これはこの空気を払拭する絶好のチャンスかもしれないとも思ったが、自分のためにお土産を買ってきてくれたことは素直に嬉しかった。
しばらくして木乃香が食卓に戻ってくると、手には小さめの紙袋が二つ握られていた。
「何がええかみんなと相談したんやけど、中々一つに絞り切れんくてなぁ。せっかくやから二つ買うてきたえ」
「えっ!二つもですか!?なんか申し訳ないです」
「気にせんといてぇな。日頃からお世話になってるネギ君へのささやかなお返しや」
そう言ってもらえて悪い気はしない。木乃香達の心遣いにネギは感激で泣きそうであった。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます!木乃香さん!明日菜さん!」
お土産を手渡され満面の笑みで二人に感謝するネギ。それを見て木乃香も明日菜も笑ってくれた。
「開けても良いですか?」
「もちろん」
「そういうところは見た目のまんまね」
意図せず普段の空気に戻っていくネギ達。逸る気持ちを抑えつつ丁寧に紙袋を開けた。
「これは…ヘアゴムですか?」
「そうやえ。なんやネギ君、一つしか持っとらへんみたいやったから」
まず一つ目はオレンジ色の小さなガラス玉が付いたヘアゴム。いつもネギは後ろ髪をヘアゴムで縛っているのだが、木乃香の言う通りヘアゴムは一つしか持っていなかった。
「交互にでも付けた方が長持ちすると思うから。そんな感じで使って」
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