大事な用事
6月6日。事件から二日が経ち、昨日の動画の件から大きく事が動き出した。新たに世に発信された情報は、世間の事件への関心をより高めた。それと同時に別次元のことに関わらなければ安全と、どこか安心を感じているものも少なく無かった。
麻帆良学園都市もトゥテラリィの攻撃対象が別次元のものと判明した為、防犯面の強化は行いつつも通常の日程に戻す方針を固めた。
4時限目の授業が終了し、各々が昼食の準備を始める。話題に上がるのはやはりトゥテラリィの事。今日一日生徒達の話題はこの一つで埋め尽くされていた。
「いやはや全く、結構な大事になっちまったなぁ」
「ほんとよ…あいつらが何を狙ってるかはわかったけど、迂闊に出歩けたもんじゃないわ。最近はいろんなところに別次元に関するものがあるし」
一年B組の教室で、四人の男女が机を合わせて昼食を取っている。正吉の発言に反応したのは癖の強い髪を肩まで伸ばした少女、棚町薫。残りの二人は祐と彼の同性の幼馴染の一人、橘純一であった。
「一応学校は普通の状態に戻ったけど、もし出歩くならちゃんと行く場所を調べないといけないね」
純一は少し暗い表情で言った。彼も祐の幼少期の事件を知る人物の一人。昨日あの動画を見て慌てて祐に電話をした。その時の通話でも今日直接会った時も、本人はいたって何ともない様子だったので安心はしたが、やはり話題に出すのは少し忍びなく思っていた。祐本人が事件のことを周りに言わないので純一もその件は黙っている。
「部活は再開するみたいだけど、我らの梅原正吉君は今日は剣道部に行くのかね?」
「祐、お前わかってて言ってるだろ…」
「えっ!行かないんですか⁉︎」
「うるせぇよ!」
正吉は憧れの先輩がいるという理由で剣道部に入ったが、思った以上に部活がきつかった。入部した理由も理由なので最近はサボり気味の幽霊部員と化している。
「まったく、不純な動機で入るからそんなことになんのよ」
「ぐっ、棚町まで…だが正論だから言い返せない!」
「竹刀でマグロでも叩いとけよ」
「お前喧嘩売ってんだろ⁉︎」
正吉の実家が寿司屋ということでそれに関するイジリを祐はした。薫は大爆笑である。純一としては普段通りの祐を見てあらためて一安心といった様子だった。
「いいんだよ!剣道部には期待のホープ、桜咲さんがいるんだから!剣道部は彼女に託した」
「託したって…」
正吉の発言に純一は呆れ顔である。
「桜咲さんって?」
「A組の剣道部の人」
「強いの?」
「めっちゃ強い。直接試合したことはないけど、俺でも見ただけでわかったレベル」
「ふーん」
正吉が説明すると薫は気の抜けた返事をした。そして祐と純一に視線を向ける。
「あんたら二人はA組に幼馴染何人かいるんでしょ?知り合い?」
「知ってはいるけど、ちゃんと話したことないな」
「僕も。あまり自分から喋るタイプの人じゃなさそうって感じかな」
祐と純一の解答はどちらも同じものだった。祐としては刹那はよく木乃香を見ている印象がある。何か訳ありなのかもしれないが、木乃香から特に何も言われていない為あまり首を突っ込まない様にしている。
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