師匠はご機嫌ナナメ
「おい小僧。こんなところで何をしている」
月明かりと街灯のみがあたりを照らす時間。学園と外を繋ぐ橋の上で、一人の少年がどこか遠くを眺めていた。
「お姉さんは?」
「質問に質問で返すとはなってないな。人に聞くならまず答えてからだ」
「ごめんなさい」
少年はそう言うとまた遠くを見つめ出した。
「何もしてないよ。何したらいいのかわかんないから」
「なに?」
「色々考えなきゃって思ってたんだけど、もうわかんなくなっちゃった」
「もう、わかんない」
少年は今にも泣きだしそうな顔をしていた。
「ん…」
カーテンから薄くさす陽の光を浴び、エヴァは目を覚ました。目を擦りながらゆっくりと上体を起こす。
「久しぶりに見たな…」
まだ寝惚けた状態のエヴァは、その姿勢で船を漕ぎ始めた。すると近くに置いてあったスマホから着信音が鳴る。手を伸ばし画面を見ると、ここ数日の不機嫌の原因である人物の名前が表示されていた。画面にジト目を向けつつ、通話のマークを押す。
「なんだ…」
『うわ、機嫌わるっ』
「今ので余計悪くなったわ」
一言目に何を言うかと思えば、何とも失礼な事を言う。そもそも誰のせいでこうなったと思っているのかと、エヴァは朝から機嫌が急降下した。
『あー、それは失礼致しました。もしかして…寝起きですか?』
「休日の10時だぞ?当たり前だろうが」
『当たり前では…いえ、何でもないっす』
平日ならまだしも、休日の朝10時などエヴァにとっては早朝に等しかった。
「それで?散々連絡も寄越さなかった不孝者が何の用だ?」
『……えっ、なんか怒ってます?』
「どうだろうな」
すると通話相手はしばらく無言になる。エヴァの方は多少眠気が収まった様で瞼の開き具合が上がっていた。
『あの〜、本日そちらに伺いたいんですが…』
「何しに来るつもりだ」
『いや何ってわけじゃないんですけど、その…師匠に会いたいなと…』
「……好きにしろ」
『あ、ありがとうございます。何時頃がよろしいでしょうかね…』
「昼食前に来い。茶々丸にはお前が来る事を伝えておく」
『ごちになります』
「ふん」
電話を切るとエヴァは着替えを始めた。馬鹿な弟子を迎える為に。
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「何で怒ってるんだ…。連絡しなかったからか?いやでも簡単に頼るなって言ったのは師匠だし…。やばい、わからん」
先程の通話を思い出しながら、祐はエヴァの自宅に向けて歩いていた。
昨日トゥテラリィの襲撃を制圧し、明日菜に力の事を明かした。ここの所色々あったのと、以前超包子で茶々丸がエヴァに関して何か言おうとしていた事を思い出した祐は、報告も兼ねてエヴァに顔を見せようと思っていた。
未だ師匠がお冠な理由はわからないが、とりあえず行けばわかると少しだけ速度を速めた。
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