斯くして幕は開かれた
電車に乗り目的地へと出発した祐達。ただ電車に乗ってるだけだが、それだけでも彼らのテンションは高かった。
「やべぇ、緊張して来た。俺電車乗るの初めてだから」
「なんですぐバレる嘘つくのよ…」
「嘘じゃないしん!」
「あっ、嘘だ」
祐のバレバレの嘘に明日菜が呆れ、語尾の『しん』を聞いて桜子が嘘認定をした。
その後も一行はたわいもない会話を続けていると、あっという間に目的地の最寄駅に着いた。電車に乗っていた乗客のほとんどがその駅で降りていく。駅の出口からアウトレットまでは直接つながっており、5分ほどで到着する事ができる。
「オープン当初ほどではないとはいえ、それでも人多いわね」
「確かに、まぁアクセスいいもんねここ」
オープ当初に来たことのある美砂と円がつぶやいた。
「まさに人の波と言うやつですね」
「ひゃ〜、ぼーっとしてると逸れちゃいそう…」
「手繋いでおこっか?」
「うん、お願い」
「はいはい。ほら、夕映も」
「まぁ、この方が確実ですか」
人の流れていく光景を見て夕映とのどかが感想をもらす。それを聞いてハルナがのどかに手を伸ばすと、のどかは迷わず手をとった。ハルナは夕映にも手を差し出すと、夕映もその手を握った。
「あらあら、見せつけてくれちゃって」
「これはチア部も負けてらんないね!」
「言うと思った」
そう言ってチア部の三人も手を繋ぐ。
「この流れはウチらも乗るべきやと思わへん?」
「いや、なんでよ」
「もう、そないなこと言わんと。なぁ〜祐君」
木乃香がそう言いながら祐の左手を握る。
「淑女にここまでされて黙っていては男が廃る。ほら明日菜」
そう言って祐が右手を明日菜に差し出すと、それを見て顔を赤くした明日菜が後ろに飛び退く。
「ちょ、ちょっと!私はいいわよ!」
「えっ、俺の手ってそんな汚い?」
「いや、そうじゃなくて…あ、あんたは恥ずかしくないわけ⁉︎」
「全然?」
なんて事ない顔で祐が言う。
「初等部の頃はよく手繋いで歩いとったやろー?」
「いつの頃の話してんのよ…」
確かにその頃は三人でよく手を繋いでいたが、それは小さい頃の話だ。今も変わらず手を繋げる木乃香と祐の方がおかしいと明日菜は思った。すると祐が右手を突き出しながら頭を下げた。
「お願いします!私めのことが嫌いでないのであれば繋いでください!」
「あんた何してんの!」
「明日菜、ウチらのこと嫌いになってしもうたん?」
「うっ…」
祐は綺麗に腰を90度に曲げてこちらに右手を伸ばし、木乃香は寂しそうな目でこちらを見てくる。恥ずかしさは多分にあるが二人の熱意に折れざるを得なかった。
「あーもう!わかったわよ!繋げばいいんでしょ!繋げば!」
そう言うと明日菜は祐の右手をとった。
「はい!無事トライアド成立です!」
「おめでとー三人とも!」
「式には呼んでね」
「式なんてあげるか!」
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