ハーメルン
雷獣様の兄~半妖主人公がチーレムを作る世界で悪役な弟の破滅フラグを潰してますが、いつの間にか俺がモテモテになってる件について~
目が覚めたら尻尾が生えたイケメンに連行された
暗い。あと全身が寝違えたみたいに痛い。確かに俺は仕事帰りに家で宅飲みしていた。蜂蜜みたいな色合いと喉越しの変わったお酒だったから、少し酒が進んだという自覚もあるにはある。度の強い酒を飲んで悪酔いしたのだろうか。しかし何か様子がおかしい。
重い足を動かす。ざり、という微かな金属音が聞こえてきた。暗すぎて何も見えないけれど、聴覚がとても良くなっている気がする。それで俺は気付いてしまった。
――え、ちょ……何で俺鎖で繋がれたりしてるの? 拉致されてんの? ヤバいんじゃないの? いや、俺普通のサラリーマンだったよ……?
考えを巡らせているとふいに頭が痛くなってきた。片頭痛よりももっとひどい奴だ。そりゃそうだろうな。こちとら酒が進んで二日酔いも起きているかもしれない身だし。しかし二日酔いとも何かが違う。白昼夢のような――走馬灯のような感じで頭の中で何かがぐるぐると渦巻いている。俺が知っている今までの記憶と、俺が見た事のない記憶とがごっちゃになる感覚だ。
僕
(
・
)
た
(
・
)
ち
(
・
)
に微笑みかけてくる美しい女性――彼女が棺に入っているのを、他の弟妹たちと取り囲んで涙を流したあの夜――気弱な父親―――そして、腹黒い笑みを浮かべたあの腰元――
――なんだ、何が起きている?
俺
(
・
)
は
(
・
)
誰
(
・
)
な
(
・
)
ん
(
・
)
だ
(
・
)
? あの記憶は誰のものなんだ……?
そのような疑問を抱く暇はなかった。頭痛と鎖に繋がれているという状況に加え、唐突に外が明るくなったのだ。壁の一角が吹き飛ばされるという暴力的な方法で。唐突な爆発に俺は驚き、半ば本能的に身を丸める他なかった。しかし幸いな事に何かがぶつかってきたとか、そういう事はない。強いて言うならば、俺を縛っていた忌々しい鎖が断ち切られた事くらいだろうか。鎖が切れた瞬間は見ていない。しかし音と感覚でその事が解った。
「大丈夫か。俺の可愛い甥っ子よ」
甥っ子。俺をそう呼ぶのは若い男だった。灰褐色の髪は光の加減で暗い銀色に輝き、瞳は明るいブラウンだった。ついでに言えば長身のイケメンでもある。俺はそのイケメンを前にして首をかしげて様子を見るのがやっとだった。二十歳前、下手をすれば高校生くらいに見える男に甥っ子呼ばわりされるような筋合いはない。
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