ハーメルン
雷獣様の兄~半妖主人公がチーレムを作る世界で悪役な弟の破滅フラグを潰してますが、いつの間にか俺がモテモテになってる件について~
玉藻御前の末裔(♂)が俺を化かしに来たんですが
「ちゃんと人数分買って来たけれど、好みとかがあるだろうから色々なのを買ってきたんだ」
雪羽はそう言うと、レジ袋を比較的綺麗な台の上に置き、慣れた手つきで缶ジュースたちを取り出していく。雪羽に従う若妖怪たちは、取り囲むような形で様子を窺っていた。
全てを並べ終えると、雪羽はちょっと気取った様子でハクビシンギャルの方に近付いた。
「お姉さん。まずはお姉さんから選んでよ。お姉さんが選んでから、俺らは何を飲むか決めるからさ」
「掃除を手伝っただけでここまでしてくれるなんて至れり尽くせりね」
「俺たち、お姉さんが働いてくれて助かったからさ」
相変わらず蓮っ葉な物言いをするハクビシンギャルに対し、雪羽ははにかんだような笑みを見せている。やっぱ可愛いわ。
さてハクビシンギャルは缶ジュースをしげしげと眺め、アルコール類が無いのを確認していた。それから雪羽の方に色っぽい笑みを浮かべたかと思うと、ソーダ水の缶を選んだのだった。
「さて他の皆。お姉さんがジュースを取ったから好きなのを選んで良いぞ。欲しいのがかち合ったからって喧嘩しないようにな」
ジュースを取るように促す雪羽は小学校の若教師のようで俺は思わず笑みをこぼした。確かに今の雪羽も若い妖怪たちを武力で従えて手下にしている気配はあるにはある。しかしきちんとリーダーとしての任務も果たそうとしている所が微笑ましかった。
いや……雪羽は三國叔父さんの事をよく見ているのだ。叔父さんも雪羽のそれと規模は違えど妖怪たちを抱え、従えるリーダーであるし。
そんな事を思ってホクホクしていると、急に雪羽が俺の方を向いた。
「あ、待って。兄さんが先に取ってから好きなのを選んでくれよな。
さ、兄さん。まだいろいろな種類があるから、先に好きなのを取っても良いよ」
唐突な身内びいき兄びいきに俺はびっくりして目を丸くした。
たった今雪羽は部下たちに好きなのを喧嘩せずに選んでも良いと言い放ったばかりである。朝三暮四も真っ青な撤回ぶりではないか。
雪羽。兄を尊敬しているのは解るがそんな事を言っていいのか。外様であるハクビシンのお姉さんもいるじゃないか……恨みがましい眼差しを向けてみたものの、雪羽は涼しい顔で微笑むだけだ。
ならばと周囲の妖怪たちに視線を向ける。彼らに不平の色は無かった。むしろ雪羽の無茶ぶりに納得し、それで構わないと暗に言っているような眼差しを向けているではないか。彼らは雪羽に従っている妖怪だ。だが雪羽が俺の事を兄として慕っているのを知っている。だからこその態度なのだろう。
居心地の悪さと申しわけなさをひしひしと感じながら、俺は息を吐いた。
「雪羽。俺は最後に選ぶよ。皆を差し置いて選ぶのも気が引けるしさ。それに何より、残り物には福があるって昔から言うし」
俺の言葉に皆は納得したらしく、平和につつがなくジュース選びが始まってくれた。
※
最後に残っていたジュース缶を俺が取るのを見届けてから、雪羽が乾杯の音頭を取った。何故乾杯なのかは解らないが、そこはまぁそう言うテンションだったから、という事なのだろう。現に俺も明るい気分になり、河渡君や雪羽、或いはハクビシンギャルなどと乾杯をやっていた。缶ジュースだけど。
「やぁこんにちは雷園寺家のお坊ちゃま方。出前を届けに来たよ」
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