ハーメルン
身に覚えのない「妻」と「娘」を名乗る不審バの狭間に
「おかえり」
「
お
(
・
)
か
(
・
)
え
(
・
)
り
(
・
)
、トレーナー君」
―――ただいま、と言えた。
存外、私の未来は。
そう悪いものではないんじゃないか、と。
そう思えたから。
「そういえばきみ、私の説得が通じなかったらどうしていたんだい?」
縛り付けられた紐をほどきながら、タキオンが不思議そうに訊いてきた。
「どこかで日雇いのバイトでもしながらひっそり暮らそうと思ってたけど……」
しかしよく考えれば結婚しているので、一旦冷静になるまで距離を……というレベルに留まったのではないか、とぼんやり考えていると。
「ふぅン……今更逃げられると思っていたのかい? きみにはちゃんと責任を取ってもらわなければならないからねえ」
「え?」
何やら不穏な言葉が飛び出した。
責任?
いや、記憶に一切ないものの、結婚までしておいて逃げると言うのは確かに最低だが。
タキオンは続ける。
楽しそうに。にやにやと。
「私の夢を諦めさせなかった、その責任を。……ま、これは今度話そうか」
それより、と。
今日一番楽しそうな顔をして、彼女は言った。
「―――娘まで産ませておいて、今更私から逃げられるとは思わないことだよ」
―――は?
私、娘いたの?
[9]前
[1]後書き
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:5/5
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク